書評

気温の低下と農業『アメニティデザイン』

ぐっと冷え込んできた。着るものに気をつけて、風邪をひかないように、暖かいものを食べる…ぐらいが、普通の都市生活者の対応であろう。しかし、気象条件の変化は、さまざまな影響を与える。 たとえば、農業である。それは死活問題につながるのである。 元・…

魚は水、人は人の中 (師・小野田寛郎のことば)

フィリピン中部に甚大な被害をもたらした台風30号。フィリピンというとルバング島の小野田寛郎さんを思いだす。発見され日本に帰還したのは1974年、その後何度かテレビで南米の牧場でのお元気な姿を拝見した。1922年のお生まれであるから、現在90歳を超えて…

魂の経営、本業消失の危機に立ち向かえ

車が売れなくなった自動車メーカーはどうなるのか。 鉄が売れなくなった鉄鋼メーカーはどうすればいいのか。 我々は、まさにそうした事態--、本業消失の危機に直面していた。 ポール・マッカートニーが大阪の関西国際空港に降り立った。集まったファンは一斉…

The Book of Tea

いつも思います。年に何度か土曜日や日曜日に自宅からクルマで1時間ほど離れた場所にある墓にお参りに行きます。首都圏から休日の高速道路の朝の下り線は渋滞を起こします。通常であれば1時間で行くところが2時間以上かかることもあります。したがって、早朝…

看護学と医学(上巻・下巻)

昨日のブログで医師と患者のことについて触れた。そこでは深く触れなかったが、医師と患者のコミュニケーション、医療の思想と医療技術、データ至上主義、心の交流などのことについて本来であれば、たくさん触れたいことがあるのだが、一遍には無理なので、…

高橋亀吉・私の実践経済学

数日前のエントリー記事でも書いた、大学時代に属していたサークルの現役学生たちから、学生たちに何かスピーチをしてほしいという要望があり、とりとめのない話を昨晩1時間半ほど大学の教室でしてきた。大学内で約100年の歴史を持つ経済を研究するサークル…

拡大する食品の虚偽表示

関西の著名なホテルに端を発した食品の虚偽表示問題が止まらない。数多くの有名百貨店に拡大している。この問題は多面的に考えるべきだ。売る側の責任は言うまでもないが、買う側も、また高級食品やグルメを単に礼賛するメディアにも反省が必要である。 先日…

体験と経験(『商業経営の精神と技術』を超えるには)

自宅近くの業務用食品を売るというコンセプトが店名になったスーパーに買物に出かけた。鮮度の良い生鮮品、豊富な冷凍食品の品ぞろえ、世界各地から仕入れた加工食品、そしていずれも徹底した買いやすさを感じさせる価格の商品でコンパクトな小規模スーパー…

川崎とテキサス州オースチン

連休中に川崎市民ミュージアムに出かけた。http://www.kawasaki-museum.jp/ 美術館や博物館というのは敷居が高いイメージがあるが、必ず多くの発見やアイデアのヒントが生まれる場所である。川崎市民ミュージアムは、先日のエントリーでも取り上げた南武線の…

勅使河原蒼風

本書は、次のような文章から始まる。 「花」は壊れ物である。消えてなくなるものである。場所を占めてそこに置かれていても、それはその時かぎりの時間を生きている。回顧することはできても、取り戻すことはできない。その一時限りのもの、その「時」を生き…

礼儀覚え書

「稽古」とは「むかしを考える」ということである。古くから伝えられた「型」は生きている、生き続けてきた。今日の「型」になるまでに、余分なことは削られ、必要なことはつけ加えられてきた。つまり、「定型」というのはじつはないのであって、「型」はつ…

武道とは何か

フェイスブックの「友達」である前の職場の仲間が「女子の空手」の動画を紹介してくれている。 http://www.youtube.com/watch?v=KTpM0d6lr4A&feature=youtu.be 2012年11月フランス・パリで開かれた空手・形の部で優勝し世界一に輝いた宇佐美里香さんの「形」…

ドラッカーに先駆けた江戸商人の思想

『ドラッカーに先駆けた江戸商人の思想』の著者である平田雅彦さんは、松下電器(現・パナソニック)の副社長を最後に経営の一線を退かれ、その後、産能大の客員教授で「企業倫理」の講座を担当された。ドラッカーに先駆けた 江戸商人の思想作者: 平田雅彦出…

しぶとく自分を生き抜く!

JR南武線を時々利用する。武蔵溝ノ口と武蔵小杉の間だ。南武線は川崎と立川を結ぶ地味な線で、とくに話題になったり華やかな場所はない。最近では武蔵小杉駅が横須賀線や湘南ライナー停車駅になったことで高層マンションラッシュになっているのが注目だろ…

勝者の条件(デニス・コナーの挑戦の哲学)

9月末に世界最高峰のヨットレースであるアメリカスカップ第34回大会がサンフランシスコで開催され、米国のオラクルチームUSAがエミレーツチーム・ニュージーランドを破り優勝した。先日その模様がテレビで放映されたのを見た。 アメリカスカップというと…

セレソン

男子サッカー日本代表は、来年のブラジルワールドカップのアジア予選は早々に通過したものの、その後の国際試合では結果を残すことが出来ずにおり、日本経済と同様に沈んだ状況にある。また女子もU―19(19歳以下)女子アジア選手権で4位に終わり、来年…

人はチームで磨かれる

19日の土曜日の午後、BSフジでプレナスなでしこリーグのINAC神戸レオネッサと浦和レッドダイヤモンドレディース戦を見た。 試合は2−1でINACの勝ち。最初の得点は浦和であった。その失点にかかわってしまったのがINACの清水あかね選手(20歳…

黒田官兵衛の情報学

来年2014年のNHK大河ドラマは黒田官兵衛を主人公とする「軍師・官兵衛」である。官兵衛は信長、秀吉、家康に仕えた戦国時代を代表する軍師である。とくに秀吉に仕えて山崎の合戦で明智光秀を平らげ、小田原を二十万の大軍で囲んで降伏させ、天下統一を果…

駅弁女子

イラストレーターなかだえりさんの本は、「東京さんぽるぽ」「奇跡の一本松」などを読んできて、そのほのぼのとしたイラストは、心がなごむ。今回「駅弁女子」という新刊を読んだ。 建築を学ばれた大学生時代に、女子なのになぜか遊郭建築に関心を持ち、全国…

アルトリ岬

小説『アルトリ岬』の作者は加治将一(かじ・まさかず)さんです。加治さんのノンフィクション作品では、幕末維新の真相を暴いた驚愕の書といわれる『竜馬の黒幕』や、秘密結社フリーメーソンの真実に迫る衝撃作といわれる『石の扉』を読んでいます。ノンフ…

温故知新と江戸しぐさ

テレビ東京のワールドビジネスサテライトを見ていたら伝統工芸の現代への応用が取り上げられていた。鹿児島の薩摩焼や福井の越前漆器が現代の生活における食器としてどう活かされているか、伝統工芸作家たちと販売する売り手、消費者の関係が描かれていて興…

世界の経営学者はいま何を考えているのか

医療の世界における現場とは、病院の医師の活動であり、患者の病気を治そうという努力である。その現場を支えるのは、病院スタッフ、医療機器や製薬にかかわる業界関係者、医療研究者達である。ノーベル賞に輝いた山中教授は、ご本人も言われているように現…

下町百貨店・ダイシンは、なぜ、不況に強いのか

百貨店は昭和30年代から40年代にかけて日本全国の小売流通の中心だった。まさに老若男女、子供から年寄りまで百貨店が日常の生活のハレもケも対応してくれるワンストップサービスの場であった。 昭和50年代から、世の中はクルマ社会が進展し、それとどうじに…

舞妓の言葉(京都花街、人育ての極意)

街はコンビニエンスストアやチェーン居酒屋に席巻されている。伝統的な食材店や居酒屋は減少の一途である。たしかにコンビニは便利だし、チェーン居酒屋の270円メニューのバラエティは魅力的だ。世の中がデフレスパイラルに巻き込まれ、どうやら政治の世界も…

ローマの哲人・セネカの言葉 中野孝次

「憩(やす)んでいる者には行動が、行動しているものには休息が、必要だ。」(道徳についてのルキリウスへの手紙3-6) 落ち着きなく絶えず忙しく動きまわっている人間もいるし、じっと坐りこんで何もしない者もいる。どちらもダメだ、とセネカは言うのだ。…

下町ロケット

TBSラジオの開局60周年記念ラジオドラマ「下町ロケット」を聴く。 昨年の直木賞作品である池井戸潤・著「下町ロケット」(小学館)を読んでいたことと、先月その小説の登場人物である神谷弁護士のモデルとなった実在の鮫島正洋弁護士の話を聞いたこともあ…

花ならば花咲かん

会津藩の歴史は、寛永二十年(1643)保科正之によって立藩されたことにはじまり、明治元年(1868)戊辰戦争に敗れたことによって幕を閉じました。その足掛け二百二十六年間は、大まかにいえばつぎの三つに時代区分できるでしょう。 1)保科正之が幕政を指導…

小説後藤新平

先日、青山佾(やすし)元・東京都副知事の講演を聴いた。「災害に学び、災害に備える」というテーマで、三宅島噴火、ニューオーリンズ水害や東日本大震災から何を学ぶかという話であった。被災者の物理的そして精神的な衛生のため風呂に入ってもらうことの…

『逆説の政治哲学』岩田温

我々が古典を読んでいて非常に面白いと感じるのは、数百年、数千年の昔に書かれた著作であるにもかかわらず、「これは現在の話をしているのではないか」と、思わせるような指摘が数多く出てくることです。 と若き政治哲学者の筆者は言う。 本書は、「政治と…

『日の名残り』 カズオ・イシグロ

英国で最高の権威ある文学賞といわれるブッカー賞を受賞したカズオ・イシグロの代表的小説『日の名残り』(The Remains of the Day)を読む。翻訳本と英語のペーパーバックを両方参照しながら。 英国における「品格ある執事道」を追求する主人公が、短い旅に…