魂の経営、本業消失の危機に立ち向かえ

車が売れなくなった自動車メーカーはどうなるのか。
鉄が売れなくなった鉄鋼メーカーはどうすればいいのか。
我々は、まさにそうした事態--、本業消失の危機に直面していた。

ポール・マッカートニーが大阪の関西国際空港に降り立った。集まったファンは一斉に携帯電話のカメラで写真を撮る。そこでフィルムカメラで写真を撮っていた人は、おそらく皆無だろう。
どこでもこうした風景はあたりまえになってしまった。写真は携帯電話でとるもの、と。空港でファンが撮影した映像は、メールで友人たちにその場で送られたり、フェイスブックやブログにその場でアップしたり、自宅に帰れば電子媒体を通じてPCなどに収納され、プリンターでプリントされる。そこにかつてのフィルムは介在しない。

魂の経営

魂の経営

富士フィルム、かつての社名は富士写真フィルムといった。西暦2000年、まだわずか10数年前である。カラーフィルムの世界需要はピークを迎え、その頂点に、あのガリバー企業といわれた巨人・コダック社を押さえて富士写真フィルムがトップを走っていた。その20世紀から21世紀に時代が移ったときから同社を劇的環境変化が襲い掛かる。デジタル革命である。カメラといえばデジカメ、電話といえば携帯電話、この携帯電話にカメラが組み込まれていく。猛烈なスピードでデジタル革命が21世紀の最初の10年に進んでいく。
それから10数年、もはやフィルムの世界需要は2000年の10分の1以下。そして、コダック社は2012年、米国連邦破産法11条の適用を申請した。
かたや富士フィルムは、奇跡ともいえる事業構造転換を短期間で達成し、医療や化粧品の分野に進出し生き残った。この大きな船の方向転換のかじ取りを一身にになった船長役の古森重隆さんが『魂の経営』東洋経済新報社を発刊された。

本業消失
来るものが、来た
富士フィルムは写真文化を守る
変化を作り出せる企業を目指す
学級委員では有事のリーダーは務まらない
普遍的な法則が理解できていれば、専門外の判断も誤らない。
ただ勝つのではなく、賢く、正しく、強く勝つ
会社は自分を育ててくれる学校ではない
人頼みをする前に自分は何をしたか
会社を思う気持ちが強い人は伸びる
・・・・

一冊の本では表わしきれない嵐が会社の中に吹き荒れたことは想像に難くない。いばらの道を一気に駆け抜けることができた秘訣は、この本ではおそらく1%も語られていないだろう。本業消失脱却のマニュアル本ではないのだから。あとは読者が、どう創造力を発揮できるかだ。