魚は水、人は人の中 (師・小野田寛郎のことば)

フィリピン中部に甚大な被害をもたらした台風30号。フィリピンというとルバング島小野田寛郎さんを思いだす。発見され日本に帰還したのは1974年、その後何度かテレビで南米の牧場でのお元気な姿を拝見した。1922年のお生まれであるから、現在90歳を超えておられるであろうか。
小野田さんの言葉を綴った本に『魚は水、人は人の中』原充男著がある。

魚は水 人は人の中―今だからこそ伝えたい師小野田寛郎のことば

魚は水 人は人の中―今だからこそ伝えたい師小野田寛郎のことば

人間は一人では生きられない
ルバング島での一番の悲しみは 戦友を失ったことだった
魚は水の中でしか 人は人の中でしか 生きられない

残置諜者としてルバング島に残って28年目に、最後に残った戦友の小塚一等兵が死亡。一人になったその時から小野田さんの緊張の糸は途切れていき、ついに30年目、小野田さん52歳のとき、捜索隊のもとに出向き、帰国を果たす。その時の心情を語った言葉が本のタイトルになっている。

野生動物に勝手にエサを与えていると
だんだん凶暴になって
エサを与えた人間までも襲うようになる
子供も最初は野生

野生の動物にエサを与える場合、動物への愛情からでなく、与える人間が楽しむためにやっているだけ、ということはないか。子供に物やお金を与えることも親の勝手気ままな都合だと、野生の子供が凶暴になって当然だということ。

他人の目を気にするのが あたりまえ
気にしなくなったら 本物

独りになると自分を冷静にみられるのは、自分自身と比べるしかないから。本物とは、自分の力や性格や能力や想いを、正確に自分自身が理解して、行動できる人のこと。

「捜索」とか「救出」というのはことは、周りが勝手に言っていたこと。私は行方不明者でも遭難者でもなかった。私はただ任務を遂行していただけだ。他人は勝手に私を想像する。三十年の私を知らないで。

今回のフィリピンの被害を小野田さんはどのような想いで見つめているのであろうか。