書評

たたかう植物~仁義なき生存戦略

【書評】『たたかう植物~仁義なき生存戦略』稲垣栄洋、ちくま新書、2015年刊7月も半ばに入り、もう少しすると子供たちは夏休みに入る。夏休みというと、アサガオの観察日記をつけたことを思い出す。種を蒔くと双葉が出て、本葉が出た後はぐんぐんと伸びてい…

「オレは進歩と調和なんて大嫌いだ」(岡本太郎)

2025年の大阪万博開催が決まった。ある年齢以上の人にとって思い出すのは1970年の大阪万博であり、そのシンボルであった太陽の塔だろう。 『芸術は爆発だ!(岡本太郎痛快語録)』岡本敏子編著、小学館文庫、1999年刊は、岡本太郎の秘書・養女として50年間、…

グーグルを驚愕させた日本人の知らない日本企業

南スーダンへの自衛隊PKO部隊派遣をめぐっては、国会やメディアで大きく取り上げられましたが、ことの本質を論じるというより、日本国内の与野党間での政治的批判合戦に終始していたように思います。 その証拠に、すでに派遣が行われてしまうと、メディア…

「あなたも国際政治を予測できる!最強兵器としての地政学」

米国大統領選で一貫してトランプ優位を主張されてきた藤井厳喜さんの著書に「あなたも国際政治を予測できる!最強兵器としての地政学」(ハート出版)2016年9月刊がある。 猫好きで涙もろい藤井さんが2003年に刊行した「世界地図の切り取り方」を改訂・加筆…

古事記の宇宙

『古事記の宇宙』竹内睦泰(たけうち・むつひろ)著が11月3日に発刊された。 すでにamazonランキングでは歴史・地理の部門で1位となっている。 https://www.amazon.co.jp/dp/4792605709/ 竹内さん(通称むっちゃん)の存在を知ったのは1年半ほど前に見た、ネ…

人工知能と経済の未来

21世紀は人工知能の世紀だといわれている。 人工知能とは、コンピュータに知的な作業をさせる技術のこと。 身近なところで話題になっているのは、セルフドライビング(自動運転車)であろう。2020年の東京オリンピックを目途に実用化が目指されている。最近…

大隈重信演説談話集

大隈重信は早稲田大学創立者として知られているが、第8代・第17代の2度にわたる内閣総理大臣として近代日本の設計者として活躍した。今年の3月に岩波文庫から『大隈重信演説談話集』早稲田大学編が出版された。早稲田大学と並び称される私学の雄、慶応義塾大…

捨てられる銀行

かつて不良債権処理ばかり注力してきた金融庁は、猛スピードで地域金融行政の大改革に取り組もうとしている。 2015年7月、森信親氏が金融庁長官の座について以来、地方創生実行に向けて大きく舵を切った。「絶対に潰れない銀行を磨き続けることよりも、銀行…

田中角栄論

今から15年前ぐらいであっただろうか。六本木までタクシーに乗った。その個人タクシーでは、田中角栄の演説の録音テープが流されていた。運転手さんに尋ねると、「私の友人のタクシー運転手が目白の田中邸のお抱え運転手だったんですよ。彼から田中さんのこ…

『乱れからくり』と推理力

『乱れからくり』泡坂妻夫、創元推理文庫(日本推理作家協会賞受賞作)を読んだ。 最後まで真犯人がわからない。そして最後のどんでん返し。 推理小説の書き手というのは、本当に緻密な頭脳の持ち主であると思う。 古くはコナンドイルのシャーロックホームズ…

若い有権者のために

選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が19日に施行される。新たな有権者にとっては、この参院選は初の国政選挙となる。 政党各党は若者との接点づくりのため、さまざまな動きを試みているようである。 さて、有権者としての先輩でもある20歳以上…

『成城石井の創業』日本経済新聞出版社

スーパーマーケット成城石井はローカルな食品スーパーとしてスタートしたが、現在では首都圏や関西圏で知名度の高い個性を持ったスーパーチェーンになっている。 本書は、その創業者である石井良明氏が、小田急線・成城学園前駅の駅前にあった両親の経営する…

『みんなが知らない超優良企業』講談社+α新書

著者の田宮寛之さんは、東洋経済新報社で「会社四季報」や「就職四季報」の執筆・編集にかかわってこられた。 その経験を活かし、現在と今後の日本企業の成長分野を独自の視点から整理され、具体的な事業や商品と企業名を紹介している。 著者が想定している…

『五色の虹』三浦英之、集英社、2015年

「満州建国大学、卒業生たちの戦後」というサブタイトルがつけられた本書は、2015年第13回開高健ノンフィクション賞を受賞した作品である。 http://amazon.co.jp/dp/4087815978 かつて、中国大陸あった上海東亜同文書院やハルビン学院という日本のトップレベ…

僕は人生についてこんなふうに考えている

インターネットの普及により、従来のメディアからは得られなかった情報を手にすることができるようになった。またブログやfacebookの活用により、自らの考えや日常を容易に発信することができるようになった。そこでの発信の積み重ねが発信者の人物像を作り…

僕らはまだ、世界を1ミリも知らない

日本経済の失われた20年ということが言われているが、この20年間に大きく変化した経済環境の変化は、デジタル化とグローバル化であろう。 デジタル化はパソコンの普及とインターネット社会である。グローバル化は、企業活動における国境という壁が強固なもの…

『イギリス・繁栄のあとさき』『イギリス近代史講義』

多くの人は固定観念や常識というものにとらえられてしまっている。それが、時々打ち破られることがある。 人と会う、現場に出向く、本を読む、インターネットに触れるといったことで違った捉え方があるのだということを経験するのである。 それが人間として…

97歳の幸福論

年末・年始に何冊か本を読みましたが、一番心うきうきしたのが「97歳の幸福論」笹本恒子著(講談社)です。 エコノミストによる経済予測書、エリックホッファーの哲学書、佐藤守さんの北朝鮮関係の書、スティーブン・ハンターのサスペンスなども読みましたが…

モウリーニョのリーダー論(世界最強チームの束ね方)

NHK−BSでイングランド・プレミアリーグのアーセナルVSチェルシーの試合を観た。この試合はビッグ・ロンドン・ダービーと呼ばれている。アーセナルの監督は名将ベンゲル、かたやチェルシーの監督はヨーロッパサッカーの代表的な監督でもあるモウリーニ…

ニッポンのグローバル人財教本

MLBのウインターミーティングでは楽天の田中将大投手が話題の中心になり、サッカーでは本田圭介選手のACミランへの移籍が決まったようである。またイチローは来年、どこの球団で活躍するのだろうか。 グローバルで最後に問われるのは個人。個人がしっか…

「超健康になる!足うら・ふくらはぎほぐし」「なんごうつぐまさが説く看護学科・心理学科学生への「夢」講義(3)」

1990年代の終わりに中国遼寧省の瀋陽に出かけた。医療機関、整形美容医院、美容院、エステティックサロン、フットマッサージの施設などを訪ね医療健康産業の将来のヒントを探した旅であった。あるフットマッサージの店では、近くの立派な病院の男性医師が出…

私の経験と考え方

何世紀にもわたって歴史を刻んできた宗教には、教祖があり教典がある。企業や学校に代表される組織にも創業者や創立者の思想が原点となる。 本書の著者である藤原銀次郎は、1869年生まれ。慶應義塾を卒業し、新聞社、三井銀行、三井物産を経て、当時業績が悪…

偉大なるナイチンゲール 「看護覚え書」「心に効く言葉」

最近の高齢の家族の看病、そして大病院や個人クリニックへの付き添いをしている中で、医療や健康について考えることが多くなった。 そして今、ナイチンゲールの存在の大きさを、あらためて感じている。次代を担う若者には、ぜひナイチンゲールの偉人伝や著作…

慎思録 貝原益軒

毎日配達される新聞は、書籍や雑誌の広告で埋まっている。肝心の新聞の記事より先に、下の方に掲載されている書籍広告に思わず目が行ってしまう。社会の木鐸とはいえ、新聞も経営のために広告収入に頼る事情はよくわかるが、広告に負けない質の高い記事を書…

二人のジョンの言葉

ビートルズのポールマッカートニーが来日し、ジョンFケネディの長女のキャロライン・ケネディが駐日大使に着任した。 今日は、ポールとともにビートルズを支えたジョン・レノンと、ケネディ大使の父である元ケネディ大統領の二人のジョンの言葉を載せておく…

『英語で「いけばな」』The Book of Ikebana

これは生け花についての対訳本だ。 数年前のある時、英語で花産業についてプレゼンテーションをしなければならなかった時、参考にした。英語で「いけばな」 (講談社バイリンガル・ブックス)作者: 川瀬敏郎出版社/メーカー: 講談社インターナショナル発売日…

日本人は海が嫌い

日本人は、何故、山が好きか。 山が「地つづき」であり、山登りは日常生活と連続する穏やかな移行であり、山の風光と四季の変化は人を飽きさせず、そこに--日本人の好む--静寂と、内省的な雰囲気と、仲間意識と心身の平和がある(ように感ぜられる)からであ…

整理と整頓

経営コンサルティングの現場や社員・職員研修の場で、「整理・整頓の意味は何か?」ということを質問してみると、誰も正確に答えられない。 ・整理とは、いらないものを捨てること。 ・整頓とは、整理の結果残ったものを使いやすく並べ替えることである。 も…

本多静六一日一話

だれでも座右に置く箴言集はいくつかあるだろう。『本多静六一日一話』は、そのタイトルにあるように一日一話、短いメッセージが366日綴られたものだ。 11月18日の項目で、本多静六は言う。本多静六一日一話―人生成功のヒント366 (PHPハンドブック)作者: 本…

生命知の殿堂

90歳を超える高齢の父親を身近に見ながら、最近次の二つのことを考えたりしている。 −看護と医療 −地球の病理と人間の病理 の二つだ。 ●看護と医療 看護と医療について刺激を受けたのは先日のブログ・エントリーでも若干触れたが瀬江千史氏の一連の著作であ…