『逆説の政治哲学』岩田温

我々が古典を読んでいて非常に面白いと感じるのは、数百年、数千年の昔に書かれた著作であるにもかかわらず、「これは現在の話をしているのではないか」と、思わせるような指摘が数多く出てくることです。逆説の政治哲学 (ベスト新書)

と若き政治哲学者の筆者は言う。
本書は、「政治とは何か」という根本的な問いを大切にしながら、プラトンキケロといった古の賢者たちの至言やレーニンヒトラーといった独裁者の叫び声を参考に、政治の幾つもの側面に光をあてた新刊である。
政治というのは完成ということはなく、つねに試行錯誤の連続であると思う。振り返れば古の時代から進歩がなかったということもあるだろう。本書は政治哲学の面白さ、身近さを感じさせてくれる良き政治学の入門書であると思う。
以下、本書に紹介されている数々の古の巨人の言葉の中で、気になったものを記しておく。

「政治的行動と動機がそこに帰着せしめられる特殊政治的な区別は友敵の区別である。」シュミット『政治的なものの概念』
「すぐれた人間とは、自分自身に多くを課すもののことであり、凡俗な人間とは、自分自身に何も課さず、現在あるがままのもので満足し、自分自身に陶酔している者である。」オルテガ『大衆の反逆』
「国家は、現に生存している者の間の組合たるに止まらず、現存する者、既に逝った者、はたまた将来生を享く者の間の組合となります。」バーク『フランス革命省察
「過度の自由は、個人においても国家においても、ただ過度の隷属状態へと変化する以外に途はないもののようだからね。」プラトン『国家』
「人々が一般に成果を戦い取ろうとするならば、純粋に心理的考慮からも、決して大衆に二つまたはそれ以上の敵を示してはならない。」ヒトラー我が闘争
「自我とは悪の同意語であると、人々は教えられてきました。無私こそ、自分がないことこそ、これこそが美徳の理想だと教えられてきました。しかし、創造者は、絶対的な意味において、自己中心主義者です。」アイン・ランド『水源』