たたかう植物~仁義なき生存戦略

【書評】『たたかう植物~仁義なき生存戦略』稲垣栄洋、ちくま新書、2015年刊
7月も半ばに入り、もう少しすると子供たちは夏休みに入る。
夏休みというと、アサガオの観察日記をつけたことを思い出す。
種を蒔くと双葉が出て、本葉が出た後はぐんぐんと伸びていく。
その急成長するアサガオは、企業の競争でいえば成長期のベンチャー企業のようだ。
アサガオが急成長するのは、「つる」で伸びる植物だからだ。
ふつうの植物は自分の茎で立つので、茎を確立するのに時間がかかる。
アサガオは他の植物などに絡まり、頼りながら伸びるので、エネルギーを節約できて伸びが速い。
いち早く生長できれば、広々とした空間を占有し、存分に光を浴びられる。
軍事や政治経済で他国に頼る国の競争に似ていないだろうか。
植物を見ると癒される、と言われている。
すくすくと太陽に向かう木々や美しい花々。
植物は争いのない平和な世界のように見える。
動物は、他の生き物を食べたり、植物を食べて生きている。
植物は他の生き物を殺さなくても生きていける。
太陽の光と水と土があれば生きることができる。
しかし、現実は、日光や水や土壌などの資源をめぐって、植物は激しい争いを繰り広げているのである。
平和そうに見える植物たち。
実は激しい戦いを演じている。
これが自然界の実態である。
本書は仁義なき戦いを繰り広げる「たたかう植物」を見事に、わかりやすく描き出している。
本書を読みながら、たたかう企業、たたかう国家、たたかう人間、たたかう生物に思いをはせてしまう。