下町百貨店・ダイシンは、なぜ、不況に強いのか

百貨店は昭和30年代から40年代にかけて日本全国の小売流通の中心だった。まさに老若男女、子供から年寄りまで百貨店が日常の生活のハレもケも対応してくれるワンストップサービスの場であった。
昭和50年代から、世の中はクルマ社会が進展し、それとどうじにスーパーマーケットのチェーン店が全国津々浦々に浸透しだす。平成の世になると、郊外型のショッピングセンター、都心部やロードサイドはコンビニ店で埋め尽くされる。”下町百貨店・ダイシン”はなぜ、不況に強いのか
百貨店はというと地方百貨店は衰退の一途をたどり、都心部の百貨店はきらびやかな高級店の集合体となり、庶民の足は遠のいた。
高齢化社会を迎え、いま、あらためて百貨店に注目が集まりつつある。東京・大森にあるダイシンはユニークな百貨店である。よくよくこの店に通ってみると、実はダイシンこそ今後の百貨店の姿を映し出す店のように思えてくる。歴史は繰り返す。繰り返すとはいえ、昔の姿に戻るのではない。考え方、コンセプトが昔に戻るのだ。昔のわくわく・ドキドキした百貨店に。
著者の西山敷(にしやま・ひろし)氏は、ダイシン百貨店の社長。経営危機で存続が危ぶまれた百貨店を高収益事業に復活させた立役者である。その経営のコンセプトは「Old&New 住んでよかった街づくり」である。
「ダイシンで育った私も今、娘をダイシンで育てています。ソフトはなくさないで!!」
最近改装された店舗の旧店舗がなくなるときに階段の壁に落書きされた一言である。ソフトとは、名物のソフトクリームのこと。こうした顧客の声に敏感な経営者の姿が、この本から伝わってくる。

・ダイシンは歯磨き博物館
・味噌180種類、豆腐50種類、納豆30種類、トイレットペーパー50種類
・ペットフードは3000種類、日本で売られているペットフードはほぼすべて置いている。
ロングテール理論の実店舗版
・高齢者向けに刺身4切れ、豚肉40グラムから
・家電売り場ではカセットテープを販売。お年寄りのカラオケ自慢ののどの録音の必需品。最新式より使い慣れたカセットがいい。
・一日もかかさず来店する人が160人。
・ダイシンの店員たちはバカがつくほど丁寧に商品説明をする。
・タバコライオン、ネズミ取り、柳屋ポマード、バイタリス・ヘアリキッド、亀の子タワシ、ココナッツサブレも売ってます。

半径徒歩500メートル圏シェア100%と言われる徹底した地域密着店舗。ここに高齢化社会の中で小売業が存在する原点が見てとれる。
昨年末、ダイシンを訪れた際に、文房具売り場で見つけたコクヨのノートブック・統計40枚(ノー4V)。罫線の入った統計数字記入用のB5縦のノートだ。今までいろいろなノートを使ってみたが、このノートは初めて知った。使い勝手がよい。景気指標や財務データの整理用に使っている。
文房具売り場もマンネリ化せずに顧客に新しい発見をしてもらえるようチャレンジせよ、という西山社長の声が聞こえてきそうだ。