偉大なるナイチンゲール 「看護覚え書」「心に効く言葉」

最近の高齢の家族の看病、そして大病院や個人クリニックへの付き添いをしている中で、医療や健康について考えることが多くなった。
そして今、ナイチンゲールの存在の大きさを、あらためて感じている。次代を担う若者には、ぜひナイチンゲールの偉人伝や著作を読んでほしい。医療や看護・介護の仕事につこうとしたり、すでについている人だけでなく。すべての働く人々にナイチンゲールの思想と行動を見直してほしいと思う。
ナイチンゲールの名は誰でも知っている。看護師の代名詞ともいえる。1820年にイギリスの裕福な家庭に生まれ、1854年クリミア戦争に看護婦として従軍し、その働きぶりから「クリミアの天使」と呼ばれた。後に看護師が「白衣の天使」呼ばれるようになったのは、ナイチンゲールの仕事ぶりがきっかけである。そして1910年に亡くなった。
ナイチンゲール本人は、次のように語る。

看護覚え書―看護であること看護でないこと

看護覚え書―看護であること看護でないこと

天使とは、美しく花をまき散らす者ではなく、苦悩する者のために戦うものである。

この一言で、ナイチンゲールの人間としての大きさが伝わってくる。
ナイチンゲールの残した多くの著作の中の代表作に「看護覚え書」がある。
その目次は次のとおりである。

  はじめに
1.換気と保温
2.住居の健康
3.小管理
4.物音
5.変化
6.食事
7.食物の選択
8.ベッドと寝具類
9.陽光
10.部屋と壁の清潔
11.からだの清潔
12.おせっかいな励ましと忠告
13.病人の観察
14.おわりに
15.補章
16.(付録)赤ん坊の世話

ナイチンゲールは、この本の「はじめに」で、次のように語る。

この覚書は、……看護師に看護することを教える手引書でもない。これは他人の健康について直接責任を負っている女性たちに、考え方のヒントを与えたいという、ただそれだけの目的で書かれたものである。

しかし、本書は細かな具体論が満載である。
そして「換気と保温」から始まるのも驚きである。健康を考える際に見落とされることであり、ナイチンゲールは換気が大事だということから語り始める。
そして、換気に関連して、次のような記述がある。

○「責任者は、住居の衛生について配慮すること、自身で実行するだけでないこと」
「私はいつも窓という窓を開けておくのですが」と責任者たちはよく弁解する。もしあなた方がそれを実行しているとしたら、それは確かに、全く実行しないよりは、はるかにましであろう。しかしあなた方は、自分自身で行わないときも確実にそれが行われるようにできないものであろうか。あなたがその場を離れたとたんに事態が逆戻りするようなことが、絶対にないようにできないものであろうか。これこそ「責任を持っている」ということの意味なのである。前者は、たんにあなたが自分自身の手でできることだけが行われることを意味しており、後者は、しなければならないことが、あなたがいようといまいと、いつでもおこなわれることを意味している。

これは、まさにマネジメントであり、5Sであり、リーダーシップについてのナイチンゲールが伝えたいことである。看護に携わる人だけでなく、すべての職業人に意味のある言葉である。

上記の著書のほかに、ナイチンゲールの言葉をまとめたものに「心に効く言葉」があり、ここから珠玉の言葉を知ることができる。
自信をもってお奨めしたい二著である。