浪曲師・玉川奈々福さん

日本の伝統芸能というと、能、歌舞伎、人形浄瑠璃狂言、落語……など、数が多い。
世界を見渡した時に、これだけ伝統芸能の種類が多いのは日本だけ。
と、語っているのは、女性浪曲師の玉川奈々福さんである。
大学を卒業し、社会人を経験し、何気なく通った三味線教室。そこで見出されて、浪曲の曲師から、浪曲師になった。
浪曲は、意外にも明治期になって普及した。歌謡曲華やかりしころの流行歌手と同様に、かつては浪曲師が人々の大衆芸能の雄であった。
明治期の前の江戸期においては、大道芸に位置していた。雨風にさらされながら、浪曲で道行く人を引き留める。どんな劣悪な状況の中でも、道行く人の心をぐっとつかまないと商売にならないのが、大道芸。
否が応でも自らのスキルを日々ブラッシュアップしていかなければならない。
玉川奈々福さんの対談をネット番組で見た。
https://www.youtube.com/watch?v=_scu9M74hIA
https://www.youtube.com/watch?v=5ccDvvHHOqc
浪曲という時代から取り残されつつある芸能が、彼女のアピールにより、きわめて先端的なものに見えてくる。
テレビをはじめとしたマスメディアで、芸能ニュースといえば、軽薄な芸能人のプライベートなスキャンダルニュースばかり。芸能レポーターといえば、芸能の専門家ではなくスキャンダル専門家であるのが日本の現状である。
テレビ番組、メディア、芸能人、それぞれが本来の芸能を演じたり伝えたりせずに、実は芸のない素人に毛の生えたような人々を取り上げてきたように思う。
目に見えないところで、しっかりとした芸を身に着け、かつそれを一般の人たちにわかりやすく自らアピールできる人材が育ちつつある。
時あたかも、参議院選挙が序盤戦である。候補者たちは街に出て、選挙カーや辻立ちして自らをアピールしている。実際のところは、一方的に候補者の名前を連呼したり、聴衆の反応も意識することなく、ただ一方的に、マニュアル通りに政党の方針を垂れ流すだけ。
今、もっとも遅れているのが政治の世界であろう。少しは、玉川奈々福さんに学んで、演説の力を磨いてほしいものである。
玉川奈々福流の人心掌握術ができているか否かを、候補者選びの一つの基準としたい。国民の心をつかめない政治家であっては、政治家失格である。