『みんなが知らない超優良企業』講談社+α新書

著者の田宮寛之さんは、東洋経済新報社で「会社四季報」や「就職四季報」の執筆・編集にかかわってこられた。
その経験を活かし、現在と今後の日本企業の成長分野を独自の視点から整理され、具体的な事業や商品と企業名を紹介している。
著者が想定している読者層は、転職を考えたり、これから就職を考える若い人たち、取引先開拓や株式投資に関心を持つ人たちなど幅広い。またおそらく金融機関の人たちにも頭の整理に役立つであろう。
著者は5つの大きなジャンルに分けた後、個別で21の成長ビジネスをとりまとめた。
水ビジネス、水素ビジネス、原子力ビジネス、日本の当たり前ビジネス、グローバルニッチトップ、老舗企業の凄み、ロボット、介護事業、医療観光、iPS細胞、外食企業の海外進出、ネット通販を支える物流業、訪日客おもてなし、環境保護のための鉄道ビジネス、完成品より素材・部品、最先端ハイテク企業としての建設業、建設機械、素材メーカー、インフラ整備司令塔としてのディベロッパーである。
それぞれ核となる事業や企業だけでなく、関連する部品や素材の分野にまで掘り下げて紹介しているところが新鮮である。たとえば、最初の水ビジネスでいえば、海水淡水化プラントメーカーを紹介するだけでなく、海水から塩分を取り除く「濾過膜」製造企業、海水を濾過膜に通すための「ポンプ」を製造する企業、海水でさびることを防ぐ「チタン」製造業、「上下水道処理機械」「上下水道運営管理」「水道管製造」などである。
「金融業」や「食品産業」「自動車産業」といった教科書的な産業分類ではなく、独自の視点から成長分野を概観することができる。そして本書のタイトルにもあるように、耳慣れない名前の企業群が実は日本の経済の根幹を支え、世界の成長マーケットで今後も活躍していくであろうという近未来を読者に教えてくれる。読者はこの21の分野の中から、関心を持った分野について、より深く自ら検討を進めていくことができる。企業の新商品・新規事業開発にも役立つものと思われる好著である。
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