地球イチバン・花の国オランダ

10月31日(木)夜10時からNHK総合テレビで放送された「地球イチバン・花の国オランダ」は、たいへん内容の濃い、よく練られた番組であった。同番組は「地球でイチバン○○な場所」という究極の地を訪ねる紀行エンターテインメント番組のシリーズで、今回は世界一の花市場を持つオランダを元バレーボール選手の大林素子さんが訪ねた。
感心したところをまとめると次のようになる。
1.全編にわたって念入りな準備の跡が見て取れる。
2.巨大な卸売市場だけでなくオランダ国民の生活の中に花がどのように活用されているのかが具体的に描かれている。
3.花だけでなく一人暮らしの老人や結婚しない女性たち、子供の誕生を喜ぶ若い夫婦など、オランダ社会や国民の生活観がわかる。
4.けっして立派な店構えではない、街角のフラワーショップの店主の何気ない会話のなかに、花を提供するものの心情や顧客への愛情がにじみ出てくる。
5.品種改良の研究をする種苗会社、農業の工業化による大規模化だけをめざさず多品種少量生産の道を選んだ生産者など、花生産の川上に位置する人たちの様子を描き出していること。
6.増加するアフリカからの花の輸入、巨大な卸売市場を支える情報システムと構内ロジスティクス、市場内売店での質素な魚のサンドイッチ販売場面から見て取れるヨーロッパ人の質素な食事と早朝から短時間の休憩時間で忙しい市場参加者たち。
すでに花にかかわる仕事をしている人、これから花の仕事をしてみようと思っている人、花とは関係のない仕事をしているが、職業と社会の関係について考え直してみようと思う人にとって、この番組は多くのことを教えてくれる。
この番組の一つ一つのシーン、登場人物の一言一言の言葉を抜き出しながら検討・ディスカッションをしていけば、より花産業とは何か、生活の豊かさとは何か、小売業・卸売業・生産者・研究開発者の役割とは何かを深く見直すことができると思う。さすがNHKと思わせてくれた価値ある番組であった。

●番組紹介文より
大林は花を探し街を散策。父から花屋を受け継いだヤン・フィーサーさんの店で、花を買いにくる人達と触れ合った。地域に根付いたヤンさんの店には様々なニュースが入り、この日は知り合いが1時間前に出産したという知らせを受けた女性と喜びを分かち合った。花が買われるの祝い事だけではなく、花を通じて様々な人生が垣間見えるとヤンさんは語る。
今回の舞台、オランダ・アムステルダムにやってきた旅人は元女子バレーボール日本代表の大林素子。大林はアムステルダムの街を歩き、住民と触れ合いながら花の魅力を感じる。これからある同窓会のために花を買った女性に同行し、花を部屋に飾って行われるパーティーに参加。オランダでは花が毎日の生活で当たり前にやりとりされていることを実感した。
大林はヤンさんの花の仕入れに同行することに。世界最大規模の花市場「アールスメア生花中央市場」では世界各国から送られてくる花々を観察した。朝競り落とされた花は夕方にはヨーロッパ各地の店頭に並び、翌日には日本を始め世界中に届けられるという。
ヤンさんの案内で、花を買い付ける競りの会場へと訪れる。ここでの競りはIT化されており、実は自分の家からログインして買うこともできるという。また、値段の高騰を防ぐため前もって最高価格を決めておくなど、他の市場には無いシステムが取り入れられている。
花の国オランダの誕生は500年前に遡る。海より低く砂地が多いオランダの土壌は農作物の栽培には向かなかったが、16世紀にトルコから伝わったチューリップの栽培にはその土壌が適していた。こうしてチューリップは一躍国を代表する花となるが、チューリップバブルにより国を大混乱に陥れたこともある。「センペル アウグストゥス」というチューリップは、当時家1軒と取引されるまでになり、1637年2月にバブルが崩壊し、多くの人々が一瞬にして財産を失った。
チューリップバブルの教訓は生産の現場で活かされている。オランダを代表するユリを手がける会社により現代の品種改良の作業は徹底した人間の管理下で行われている。最新の品種は一際大きく鮮やかなピンクの花びらをもつ「パラッツォ」だという。
ヤンさんの花屋で仕事の様子を取材。ヤンさんが店を始めたのは25年前で、それまでは父親が通りの反対側で50年以上営業していた。友人の出産祝いに持っていくブーケ作りでは、「秋に生まれた子には秋の花を届けたい」と客に喜んでもらえる花を選んだ。
ヤンさんの作ったブーケを持って友人・バリーさん宅に向かう男性に同行。第一子を迎えたバリーさんは友人から贈られたブーケに感謝の言葉を述べた。バリーさんの実家は花の生産農家で、人生の節目にその時々の思いが込められた花が贈られてきたという。
大林はダリアの品種改良から販売まで手がける農家へと訪れる。農家のオーナーはつぼみを取る様子や、客のために機械を使わず手作業で花を選別していると伝えた。
2週間に一度は必ずヤンさんの店に訪れるというカーラさんは、この日は年の離れた妹・マレイクさんのために鮮やかなピンクのバラに紫を混ぜ、品のあるブーケを仕立ててもらった。カーラさんが訪ねてきた次の週はマレイクさんが花を持って訪ねていき、毎週花を贈り合う2人の家には花が溢れていた。オランダでは窓辺に花を置くのが普通で、これについては「幸せのおすそ分けみたいなもの」だと紹介された。
墓参りに来た人々に話を伺う。花を手にして、亡くなった母親や友人のもとへ訪れた人々は花とともにあった、友人達との思い出などを語った。
http://tvtopic.goo.ne.jp/program/info/678844/index.html

*NHKサイト
http://www.nhk.or.jp/ichiban/bnum05.html