ラジオと花〜その不思議な関係

本格的な夏を目の前にして、日本のあちこちでアジサイの花が咲いている。わたくしの自宅近くの幼稚園の庭や、近隣住宅の庭にもあざやかなアジサイが咲いている。小さくこぎれいな和食の店の前の街路にはアジサイの花が植え込みされている。また花屋さんの店頭でも珍しい品種のアジサイの花が並んでいる。しかし、そろそろ見頃を過ぎようとしているのだろうか。
事業開発やマーケティングにかかわるコンサルティングや調査の仕事に30数年かかわってきて、テーマの一つとして花業界のお手伝いを30年近く行ってきた。昨日も20年来非常勤講師を務めているフローリスト養成学校の授業を行ってきた。
90年代後半の花産業のピークであった時期、トータルマーケットは1兆円と言われていたが、日本経済の低迷とほぼ連動して、花市場の低迷が続いている。とはいえ、個別の企業などを見てみれば、首都圏を中心として主要駅構内などに出店するフローリストチェーンの普及など伸びを示す動きもみられる。
日本の花産業の需要拡大をどのように進めるか、つねにわたくしの頭の片隅に据えているテーマでもある。
米国経済は、もちろんかつてのような光を放っているわけではない。しかし、いろいろと米国における花の需要の状況などを検討してみると、順調に成長しているようである。それにはいくつかの要因があるが、その一つは意外にも、毎日の朝のラジオ放送で花を取り上げていることのようである。「落ち込んだ気分のときは、この花を身近に置くと元気になりますよ。」といったワンポイント情報の提供である。
テレビの陰に隠れて、メジャーな存在ではないラジオ放送であるが、実はテレビ以上に習慣性の強い媒体である。毎日や毎週、欠かさず聴いているリスナーがいるのである。たとえば、クルマで通勤する人々、営業車を運転するトラックドライバー、タクシーの運転手さんたち。こうしたクルマで時間を過ごす人たちは、ラジオが情報収集の中心になる。
日本の伝統的な生け花の世界に革新をもたらした草月流家元の勅使河原蒼風。かれは生け花という、ビジュアルに目で見なければわからないテーマをラジオ番組で取り上げて、日本の女性たちの心をとらえた。この蒼風のことについては、数年前にわたくしの下記の個人ブログでも取り上げている。
勅使河原蒼風についてブログでの過去のエントリー記事
http://d.hatena.ne.jp/kohnoken/20131031
ラジオはきっかけにすぎない。そこで生け花に関心を持った人は、女性雑誌などに取り上げられている「花あしらい」の記事に目を向けるのである。
さて、話題はがらっとかわって参議院選挙である。比例で立候補しているある候補の選挙カーの運転手は、個人タクシーの運転手さんのボランティアである。この候補が、毎週夕方の一日、レギュラー出演しているのを視聴しての参加であるという。
テレビの世界が低迷しているのと同時に、ラジオの世界も、とがった出演者が次々と消えつつある。クルマドライバーをはじめとして長期療養の方々など、ラジオを身近な情報収集手段にしている人たちは多い。この4月にTBSラジオの「超」長寿番組を退いた大沢悠里さん。番組冒頭で長期療養の方々もお楽しみくださいと毎日放送されていた言葉が懐かしい。
言葉の力は大きい。同じ文字の配列でも、それを語る人の声の質、抑揚、力の加減により、その語り手の人柄まで映し出されてくる。ましてや毎日、毎週聴き続けていれば、あたかも家族の一員のような気持になっていくのである。
選挙戦も中盤に入ってきた。インターネットのおかげで、候補者の生の声や映像を視聴することができる。有権者が受け身ではなく積極的に情報を取りに行く環境ができている。有権者がこれをどう生かすか、候補者がどう生かすか、その結果を待ちたいと思う。