横浜環状道路北西線の工事現場から

 東京の都心から首都高速3号線で渋谷を通り、用賀を抜け、東名料金所を抜けると、すぐ川崎インターチェンジがある。
 少し行くと横浜青葉インターチェンジ、そのすぐ先が港北パーキングエリア(PA)下りである。東名に入って初めてのPAであることで、利用客は多い。この先には日本最大級のサービスエリア(SA)海老名下りがある。飲食施設では海老名SAがファミリー・観光客向けであるのに対して港北PAはトラックドライバーなどの利用が多い。
 日本道路公団が民営化して以来、全国のSAPAは、リニューアルを続けている。

 この港北PA下り(下りという言葉を入れているのは、当たり前といえば当たり前であるが上りと下りがあるためである。鉄道の駅と違い、高速道路のSAPAは上りと下りが隔離している別施設であることが多い。)は、高速道路通行車以外の近隣の住民なども利用できるようになっている。港北PA下りの裏口を抜けると北八朔公園が広がる。長旅で疲れたら、PAからちょっと抜け出して、公園で休憩というのもよいかもしれない。

 公園を抜けると鶴見川にぶつかる。この川流域は田園地帯が広がっている。先週紹介した恩田川より都心部側の川であり、両者は下流で合流する。

 この田園地帯にクレーンが連なっている。建物の姿は見えない。トンネル工事である。首都高速・横浜環状線・北西線工事である。
北西線は、東名高速・横浜青葉ICから第三京浜・横浜港北ICまでつながる。さらに環状線首都高速横羽線の生麦ICにつながる。
 今まで、東名高速から横浜市中心部の湾岸地帯に至るには横浜町田ICから保土ケ谷バイパスを経由していたが、環状線開通により物流の流れが大きく変わることになろう。

 環状北西線は、ほとんどが地下トンネルとなる。
以前紹介した書籍に『みんなが知らない優良企業』田宮寛之著、講談社+α新書、2016年5月刊がある。
 同書の第6章「新たなインフラ需要で収益を伸ばす企業」として、最先端ハイテク企業としての建設会社、世界的に優秀な建設機械メーカー、セメントなどの素材メーカー、インフラ整備の司令塔ディベロッパーの優良企業が紹介されている。
 トンネル工事の名門「佐藤工業」、建設用クレーン国内大手「タダノ」「加藤製作所」、セメントの「太平洋セメント」など。

 住宅地帯と隣接する田園地帯の高速道路・地下トンネル工事の様子を遠くから眺めながら、
・新道路建設で物流にどのような変化が生ずるのか?
・道路・トンネル工事にかかわる企業はどんな会社か?
・土木工事には、どんなハイテク技術が使われているのか?
・都市近郊の田園地帯の農業は、どんな変化をしていくのか?
・道路、トンネル、建設、農業の日本での経験は、海外でどう生かされるのか?
などなど。

 大人も子供も良き社会科見学になるのではないだろうか。

 シンクグローバル、アクトローカル!
 シンクローカル、アクトグローバル!

アメリカズカップ:勝者の条件

11月19日、165年の歴史を持つ国際ヨットレースのアメリカズカップの予選シリーズ1日目が福岡で開催された。
予選シリーズがアジアで、日本で開催されたのは今回が初めてである。
https://www.americascup.com/en/home.html
レースの模様は、テレビ東京で放映された。出場6チームの中に日本チームが入っている。
1日3レース行われたが、日本チームは第2レースで1位となったものの、第3レースではトラブルもあり惜しくも6位となった。
2013年の10月に個人ブログの「ウイズダムダイアリー」でアメリカズカップのことを取り上げた。
それに合わせて、愛読書の一つであるデニス・コナーの『勝者の条件』も紹介した。
下記に再掲する。

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2013年10月24日 ウイズダムダイアリー
9月末に世界最高峰のヨットレースであるアメリカスカップ第34回大会がサンフランシスコで開催され、米国のオラクルチームUSAがエミレーツチーム・ニュージーランドを破り優勝した。先日その模様がテレビで放映されたのを見た。
アメリカスカップというとデニスコナーを思いだす。1983年大会にオーストラリア艇に敗れ132年間守ってきた優勝杯を逃すという屈辱を受け、4年後の大会でスターズ&ストライプ号の艇長として再挑戦し米国に優勝杯を持ち帰った人物である。
1980年代後半、私は個人として二人乗りのディンギー東京湾で楽しんでいた。若洲、稲毛、八景島に週末になると出かけていた。1990年に東京の中央区民体育大会に出場し二人乗りディンギーで銅メダルをもらった。もし金メダルだったら国体参加への道が開けていた。
そんなこともありアメリカスカップやデニスコナーには当時関心を持っていた。1991年にデニスコナーの著作である『勝者の条件(デニスコナーの挑戦哲学)』が田辺英蔵さんの翻訳でダイヤモンド社から発刊された。何度も何度も繰り返し読んだ。今でも愛読書の一つになっている。

勝者の条件―デニス・コナーの挑戦の哲学
作者: デニスコナー,田辺英蔵,金子宣子
出版社/メーカー: ダイヤモンド社
発売日: 1991/04 メディア: 単行本

ちなみに翻訳者の田辺英蔵さんには、約30年前の1987年に私が主催したあるセミナーでの講師をお願いし、何度かお会いしている。立派なひげをたたえた、品格のあるヨットマンであった。後楽園球場の経営に携わっておられた。
デニスコナーは同著の序章で次のように語っている。
アメリカスカップは、いまや単なるヨットレースではなくなっている。帆走自体に欠ける労力は五割程度で、あとの五割は事前準備、ヨットの設計、各種の計画、資金集め、委員会の運営、基礎訓練、チーム作り、物資の調達、全体の管理などに費やされる。つまり、アメリカスカップに勝つには、野心的な大事業を成功に導くためのあらゆる要素がからんでくるのだ。
この『勝者の条件』に描かれていることは大型ヨットの国際レースでいかに勝利に導いたかという経験談がベースになっているが、それはそのまま企業の新規事業や、大型イベントの成功要件に通じるものだ。
事業成功のヒントがちりばめられているが、なかでも印象深いのが、
・チームメンバーの選定方法
・リストを作って実行せよ
の二つでである。

●チームメンバー選定方法
第10章でこのことが語られる。
要約すると次のようなことがチームメンバー選定の条件である。
1)そのチームに入りたい、そのチームで見事な働きををしたい、と心から願っているものでなければならない。
2)物事がうまくいかなかった場合でも、あきらめずに目的を追求する覇気と忍耐力。また、成功の道を歩んでいても、人間性を失わず、したがって尊大になることのない人物だ。
3)経歴に「とぎれ」がある者。出世の階段を駆け上る道を閉ざすことになっても、本当にやりたいことをする勇気がある人物。メンバーの持つ多様な「とぎれ」は、予想外の事態が起こった時に、優れた対応力や柔軟性を発揮するものだ。

●リストを作って実行せよ
コナーは語る。
私はリストで生きている。
自分のリストの大半は憶えているから、すべてをメモしているわけではない。だが、誰かにまかせる場合はぜひともリストを文字にして書いてほしいと考えている。
リストに従えば、レースに勝てる。
リストに従えば、会社を経営できる。
一度に千の仕事をする人は、実際には千の仕事を同時に処理するわけではない。実は極度に早いスピードで、順次片づけているのだ。一つが終われば、リストにある次の項目がタイミングよく飛び出してくるシステムが出来ている。
翻訳者の田辺英蔵さんは訳者あとがきで次のように語る。
戦後の平和な期間に日本の若者から「卓越する願望」が失われた。若者が卓越性に対する身を焦がすような願望を失ったら、その民族に将来はない。…彼らの多くは、その願望を手に入れるための努力を惜しむ。忍耐と自己規制と精進の労力を厭う。あるいは手っ取り早く安直に目的を達成する近道を選ぶ。…この本はこの風潮に対する強烈な反論である。コナーが述べているのは、徹頭徹尾、闘いの人生である。水も漏らさぬ準備と点検と自己規制、そして努力、努力、努力の日々のことである。昼は長く、夜は短く。
企業や組織の新規事業開発やイノベーションの組織開発のコンサルティングを仕事としている者としてデニスコナーの「勝者の条件」は、もっとも大事な私の座右の書の一つになっている。
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電通「鬼十則」と「裏十則」

産経新聞11月18日朝刊によれば、社員の過労自殺が問題となっている電通が、有名な電通鬼十則」の社員手帳への掲載を取りやめる検討をしているという。
「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。」などの表現が含まれていることで、遺族から削除を求められているとのことである。
4代目社長の吉田秀雄氏によって1951年につくられた電通社員の行動規範、心構えの「鬼十則」は以下のものである。

1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

なお、鬼十則をおちょくった逆バージョンである電通裏十則」というのも、社員の間では広まっているようです。

1)仕事は自ら創るな。みんなでつぶされる。
2)仕事は先手先手と働きかけていくな。疲れるだけだ。
3)大きな仕事と取り組むな。大きな仕事は己に責任ばかりふりかかる。
4)難しい仕事を狙うな。これを成し遂げようとしても誰も助けてくれない。
5)取り組んだらすぐ放せ。馬鹿にされても放せ、火傷をする前に…。
6)周囲を引きずり回すな。引きずっている間に、いつの間にか皆の鼻つまみ者になる。
7)計画を持つな。長期の計画を持つと、怒りと苛立ちと、そして空しい失望と倦怠が生まれる。
8)自信を持つな。自信を持つから君の仕事は煙たがられ嫌がられ、そしてついには誰からも相手にされなくなる。
9)頭は常に全回転。八方に気を配って、一分の真実も語ってはならぬ。ゴマスリとはそのようなものだ。
10)摩擦を恐れよ。摩擦はトラブルの母、減点の肥料だ。でないと君は築地のドンキホーテになる。

電通という会社に問題が多いのは分かります。しかし、多かれ少なかれ、どの会社にも似たような問題はあるでしょう。
社内で少しづつ改善すべきことは改善していけばよい話。
鬼十則は、社員を縛る憲法ではありません。心構えの表現としては優れたものだと思います。
また、裏十則というのも、ユーモアがあってよいと思います。
こうした裏十則が存在すること自体、広告会社としての柔軟性であるかと思います。
目くじらを立てる話ではないように思います。最近話題の言葉狩りのように見えてしまいます。窮屈な社会が、さらに窮屈になるように思えてなりません。いかがでしょうか。

ネット上での情報発信について

ネット上での発信については、いろいろと気を付けてはいるが、
ついつい筆が走って、言いすぎてしまうことがあるかもしれないと反省している。
ここ数日、米国大統領選について語ってきた。
Facebookなどのネット情報発信では、政治にかかわる話は、嫌われるし
ましてや、特定のイデオロギー(こんな用語は死語か?)に偏ったものは
避けるべきと思う。
今回の大統領選についてのわたくしの発言は、偏った意見と思われる方も
おられると思うが、そのつもりは全くない。
私の「仕事上」の専門分野(?)は、マーケティングと新規事業開発のリサーチとコンサルティングである。
政治の世界や、ましてや米国政治情勢については全くの素人である。
しかし、今回の大統領選に関心を持ったのは、マーケティングでいうところのエリアマーケティング、生産管理などで重要な層別分析との関連が極めて高いということを認識したからである。
かっこよくいえば「社会科学上のケーススタディ」として、今回の大統領選を取り上げた。
私は自らのブログ(ウイズダムダイアリー)を11年前に始めた。その後、数年前にFacebookを始めた。
現時点で、次のことを自らの情報発信の基本に据えている。
1)自らの言葉で語る。
2)影響を受けた論説があれば、できるだけ出典を記す。
3)個人の生活にかかわる発信は、できるだけ控える。
4)読まれた方が、少しでも刺激になったと思われるような情報発信を目指す。
5)発信の責任は自らが負う。
である。
少し説明が必要かと思う。
1)自らの言葉で語ること。どんな文章でもこれが基本であると思う。ネット上での発言、とくにSNSが浸透してくると,「シェアします」と称して、他者の意見を、ただ紹介するだけのものが目立つ。私としては、それはしない。他者の意見を紹介するとしても、そのうえで自分はどう考えるかを表明する。
2)出典を示すということは、1)とも関連する。その情報発信者がどのような情報をもとに発言しているのかを明らかにすることが大事だと思うからである。
当然のことながら、発言者は情報源の信頼性を確認したうえで発信すべきと考える。政治でも、経済でも、マーケティングでも、自然科学でも、歴史でもそれぞれの分野の専門家は、目利きができる。
この論者は、こんな陳腐な情報源をもとに意見を述べているのと思われては、信用を失う。
3)個人の生活にかかわることである。facebookなどのSNS情報。三種の神器は「グルメ」「旅」「家族」であろう。
「どこどこで、こんなおいしいものを食べました」「今、旅行や出張で、どこどこにいます」「これが自慢の家族やペットです」。
それは良いのであるが、私生活周りの情報はリスクは増す。悪意を持った第三者は、その情報から何をしでかすかわからないからだ。
4)少しの刺激を与える情報。少しだけ刺激を与えることだ。
5)2とも関連するのであるが、発信する限りはその内容については責任を持たなければならない。2011年の福島原発事故以来、誤った情報発信は、重大な影響をもたらす。風説の流布につながることは厳に慎むべきだ。無責任な情報発信は罪であるということを意識すべきと思う。
こんな堅い話をすると、友達を失うかもしれない。
これは、私自身への戒めの言葉であるのでご容赦いただきたい。
11年前のブログ開始以来、尊敬すべき情報発信をしておられる4名の方々がいる。
すでのその2名については、紹介した。
毎朝欠かさず、5000字にのぼる日記を発信し続けている勝谷さん。
アスリートでありながら、ここ数年一日も欠かさず面白い文章を発信している女子サッカーの川澄さん、である。
このお二人以外の2名は、市井の方であるので、具体名は控えたい。
おひとりは、株式公開企業の経営者の方、
もうおひとりは、コンサルタントとして活躍されている方である。
このお二人とも、私自身、リアルな世界でも交流を持たせていただいた年上の先輩である。
お二人とも上記の5項目を守っておられる。
今日は(今日も?)、堅い話で失礼しました。

いつまでも飽きずに「米国大統領選・備忘録」

また、大統領選ネタで、そろそろ飽きられるのではないかと思うが、
乏しい能力ではあるが、自分の頭で考え整理しつつあることを、備忘録としてまとめておく。
1)どちらの候補を支持するかと、どちらの候補が当選するかの予測は分けて考える。
2)間接選挙、州別選挙の積み重ねという選挙制度の基本を理解したうえで予測を行う。
3)すなわち国民の投票総数がどちらが多かったかは、最終的な選挙の結果と結びつかない。
4)マクロな(国全体)での世論調査の結果は、得票総数の比率と連動する。
5)勉強不足の論者は、マクロ世論調査の結果で、当選を予測した。メインストリームメディア(MSM)の世論調査
あてにならなかった、という批判が後から出てきているが、実はMSMの予測は大きく外していない。最終得票数はヒラリー候補が上回ったという報道もある。
6)今回の選挙は、MSMでは主要両候補のスキャンダル合戦になった。本質的な両者の主張は、著作、演説などで明らかになっているはず。芸能評論家というと芸を評論するのではなく、芸能人の私生活などスキャンダルを追うのがどの国でも一般的。
政治評論家もゴシップを追うのではなく、政治そのものを評論してほしい。
7)テレビメディアだけでなく、ネットメディア上での映像・コメントは、ますます重要度を増す。
8)信用力は、たえまぬ人々の評価の連続から形成されるが、大統領選の終わった後の振り返りの意見も、当然ながら評価の対象となる。
MSMで活躍される有識者と言われる人々も、選挙前の論説、選挙後の論説できびしい評価にさらされる。言い訳を行う人、論理のすり替えを行う人、せっかく良い予測論考をしたのに、その理由を述べたときの内容がチープな人などいろいろと馬脚があらわされてきている。

そういうお前こそ、エラそうなことをいう割に馬脚を現したな、と批判されないようにしていきたい。

「あなたも国際政治を予測できる!最強兵器としての地政学」

米国大統領選で一貫してトランプ優位を主張されてきた藤井厳喜さんの著書に「あなたも国際政治を予測できる!最強兵器としての地政学」(ハート出版)2016年9月刊がある。
猫好きで涙もろい藤井さんが2003年に刊行した「世界地図の切り取り方」を改訂・加筆した著作である。すでにamazon政治学分野でランキング一位となっている。
本書は常識にとらわれたわれわれの考えを見事にひっくり返してくれる。
たとえば次の絵を見てみよう。これは何の絵か。

瞬時に分かった方は柔軟な頭の持ち主である。
あえて正解は示さないでおこう。

最近、ネット上で次のサイトが話題になっている。
http://thetruesize.com
世界地図が出てくる。左上の検索欄でJapanと入力すると、日本列島に色が付き、それを移動すると、その移動先の地域との面積比の比較ができる。
われわれはメルカトル図法を見慣れている。メルカトル図法は高緯度になるほど、距離や面積が著しく拡大してしまう。たとえば日本よりはるか北に位置するスカンジナビア半島グリーンランドなどは実際より巨大に描かれてしまうのである。

戦略家というのは、マクロの視点とミクロの視点を持つべきだと思う。
マクロの視点ということでいえば、1枚の地図でも右左や上下に回転をさせ自らの位置と他の位置を比較してみる。
ミクロの視点でいえば、特定地域を徹底的に中に入り込んで分析するということである。
マーケティングの分野でもデモグラフィック要因によるセグメンテーションが教科書の最初に出てくる。デモグラフィックとは人口統計的に層別(品質管理7つ道具の一つでもある)に見ることだ。年齢、性別、地域、所得、居住環境、人種、学歴などで層別分析を行うことだ。
マーケティングリサーチにとってこれはイロハのイ。しかし、今回の米国大統領選では、このイロハのイの追及が不十分であった。同じ世論調査結果を見ても表面的なところで終わっていては正確な状況判断はできない。
先のエントリーで紹介した渡瀬さんによれば、クロス集計という調査のイロハすら米国メディアは知らなかったのでは、と一刀両断のもとに語っている。

ミクロの視点でいえば、今回の大統領選は、オハイオ、フロリダ、ペンシルヴェニアが鍵であった。そこでの人々の心を徹底分析し、社会心理学の手法を駆使し、勝利に導く。それが選挙戦略であろう。カリフォルニアなどのリベラルが圧倒的に強い地域にトランプ陣営が力を注いでも何の成果も得られない。これは孫子の兵法にも通づることである。

再び結論をまとめる。
1)視点をいろいろと変えて考えよ。見慣れた風景だけ見てはいけない。
2)層別に分けて、重点エリアを浮き彫りにせよ。
3)重点エリアとなった層や地域について、地べたに這いつくばるように中に分け入っていって情報収集せよ。

ビジネスでも、選挙でも、軍事でもこのことが大事だと思う。

七五三と氏神様

昨日・今日と全国的に晴れの天気のようです。七五三は本来、11月15日に行われるものですが、最近は11月中旬の土日の休日に、神社にお参りする人が多いようです。今日15日は大安でもありますので、神社は結婚式を挙げられる人々でもにぎやかになることでしょう。
七五三は子供の成長を感謝して氏神様にお参りして神職の祈祷を受ける神事をもとに作られました。子供の成長の節目ごとに、子供を無事に育ててくれた神様に感謝をしたのが始まりです。
かつての日本人は、生まれてから死ぬまで一つの土地で過ごすことが多かった。武士社会になると本拠地を離れて移動する領主が出てきて、現代では、一生一つの土地に暮らす人は少なく、引っ越しの連続でしょう。
引っ越しとともに氏神は変わっていきます。最近は神社庁が全国の氏神を規定していますので、ウェブサイトで住所を入力すれば、氏神となる神社名がわかります。
私は約20年ほど横浜市青葉区に居住してきました。区内で一度引っ越しをしていますので、現在は東急田園都市線青葉台駅田奈駅の間に住んでいます。氏神の神社は神鳥前川神社(しとどまえかわじんじゃ)です。
同神社のウェブサイトで由緒が語られています。

当社は文治三年(1187年)五月、武蔵国桝杉城主・稲毛三郎重成により創建されました。
重成は敬神の念篤く、所領稲毛に稲荷社を建立すると共に霊的な夢のお告げを受け、武神日本武尊ヤマトタケルノミコト)及びその妃弟橘比売命オトタチバナヒメノミコト)を御祭神としてこの地に祠を建て白鳥前川神社と名づけたと言い伝えられて居ます。
白鳥というのは御祭神日本武尊が伊勢の国煩野(ノボノ)にて逝去の際、神霊化され白鳥になられたという故事により、また前川とは神域の真下を鶴見川支流の恩田川が流れおり、弟橘比売命オトタチバナヒメノミコト)の入水の故事に重ね合わせて名付けられたものです。それがいつの頃よりか白鳥が転じて神鳥と書くようになり、これを「シトド」又は「シトトリ」と読むようになり、今日に至って居ります。

写真は同神社の本殿と仙元社(せんげんしゃ)、恩田川です。仙元社は生命の象徴とされる霊峰富士をお祀りしているものです。



田園都市線の駅前はほとんどが都市化され商業施設や住宅が密集してきていますが、この神社の最寄り駅である田奈駅は、周辺が田園地帯となっています。恩田川という川が流れていて、川岸には自転車と人のための道が整備されていて、上流に向かうと東京都の町田市に至ります。田奈という地名は「恩田村」「長津田村」の「田」と、「奈良村」の「奈」から付けられ、昭和14年横浜市編入されました。旧・奈良村のちかくには「こどもの国」という施設があります。同施設のサイトから由来を拾ってみましょう。

1959年(昭和34年)4月の皇太子殿下(現天皇陛下)のご結婚を記念して、全国から寄せられたお祝い金を基金に、1965年(昭和40年)5月5日のこどもの日に開園しました。旧日本陸軍田奈弾薬庫補給廠跡の国有地が米軍から返還されたのを受けて、国費をはじめ多くの民間企業や団体・個人の協力で整備されました。次世代を担うこどもの健全育成のための施設で、児童福祉法に基づく児童厚生施設です。

こどもの国は、子供だけでなく大人も高齢者も楽しめる自然あふれる施設です。
ベッドタウンと化した東京や横浜の近郊地域。地元との結び付かいが希薄になっていますが、天気の良い休日には、ふらっと氏神様を訪ねたり遊歩道を歩くのもよいでしょう。
ちなみに、すでに街はクリスマスの飾りつけがにぎやかになってきました。大統領選が行われた米国では、職場や学校で「クリスマスおめでとう」ということすら憚れる風潮があるといいます。特定の宗教を強調してはならないということです。こうした息苦しい雰囲気に反旗を翻したのがトランプ次期大統領でした。
日本では、正月には神社に初もうで、お彼岸には墓まいり、暮れになるとクリスマス、最近ではハロウィンの騒ぎも付け加わりました。八百万の神を、わけへだてなく受け入れる柔軟性、多様性を本来の日本人は持っているように思います。PC(ポリティカルコレクトネス)や言葉狩りが行き過ぎるのは、どうかと思います。