「あなたも国際政治を予測できる!最強兵器としての地政学」

米国大統領選で一貫してトランプ優位を主張されてきた藤井厳喜さんの著書に「あなたも国際政治を予測できる!最強兵器としての地政学」(ハート出版)2016年9月刊がある。
猫好きで涙もろい藤井さんが2003年に刊行した「世界地図の切り取り方」を改訂・加筆した著作である。すでにamazon政治学分野でランキング一位となっている。
本書は常識にとらわれたわれわれの考えを見事にひっくり返してくれる。
たとえば次の絵を見てみよう。これは何の絵か。

瞬時に分かった方は柔軟な頭の持ち主である。
あえて正解は示さないでおこう。

最近、ネット上で次のサイトが話題になっている。
http://thetruesize.com
世界地図が出てくる。左上の検索欄でJapanと入力すると、日本列島に色が付き、それを移動すると、その移動先の地域との面積比の比較ができる。
われわれはメルカトル図法を見慣れている。メルカトル図法は高緯度になるほど、距離や面積が著しく拡大してしまう。たとえば日本よりはるか北に位置するスカンジナビア半島グリーンランドなどは実際より巨大に描かれてしまうのである。

戦略家というのは、マクロの視点とミクロの視点を持つべきだと思う。
マクロの視点ということでいえば、1枚の地図でも右左や上下に回転をさせ自らの位置と他の位置を比較してみる。
ミクロの視点でいえば、特定地域を徹底的に中に入り込んで分析するということである。
マーケティングの分野でもデモグラフィック要因によるセグメンテーションが教科書の最初に出てくる。デモグラフィックとは人口統計的に層別(品質管理7つ道具の一つでもある)に見ることだ。年齢、性別、地域、所得、居住環境、人種、学歴などで層別分析を行うことだ。
マーケティングリサーチにとってこれはイロハのイ。しかし、今回の米国大統領選では、このイロハのイの追及が不十分であった。同じ世論調査結果を見ても表面的なところで終わっていては正確な状況判断はできない。
先のエントリーで紹介した渡瀬さんによれば、クロス集計という調査のイロハすら米国メディアは知らなかったのでは、と一刀両断のもとに語っている。

ミクロの視点でいえば、今回の大統領選は、オハイオ、フロリダ、ペンシルヴェニアが鍵であった。そこでの人々の心を徹底分析し、社会心理学の手法を駆使し、勝利に導く。それが選挙戦略であろう。カリフォルニアなどのリベラルが圧倒的に強い地域にトランプ陣営が力を注いでも何の成果も得られない。これは孫子の兵法にも通づることである。

再び結論をまとめる。
1)視点をいろいろと変えて考えよ。見慣れた風景だけ見てはいけない。
2)層別に分けて、重点エリアを浮き彫りにせよ。
3)重点エリアとなった層や地域について、地べたに這いつくばるように中に分け入っていって情報収集せよ。

ビジネスでも、選挙でも、軍事でもこのことが大事だと思う。