電通「鬼十則」と「裏十則」

産経新聞11月18日朝刊によれば、社員の過労自殺が問題となっている電通が、有名な電通鬼十則」の社員手帳への掲載を取りやめる検討をしているという。
「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。」などの表現が含まれていることで、遺族から削除を求められているとのことである。
4代目社長の吉田秀雄氏によって1951年につくられた電通社員の行動規範、心構えの「鬼十則」は以下のものである。

1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

なお、鬼十則をおちょくった逆バージョンである電通裏十則」というのも、社員の間では広まっているようです。

1)仕事は自ら創るな。みんなでつぶされる。
2)仕事は先手先手と働きかけていくな。疲れるだけだ。
3)大きな仕事と取り組むな。大きな仕事は己に責任ばかりふりかかる。
4)難しい仕事を狙うな。これを成し遂げようとしても誰も助けてくれない。
5)取り組んだらすぐ放せ。馬鹿にされても放せ、火傷をする前に…。
6)周囲を引きずり回すな。引きずっている間に、いつの間にか皆の鼻つまみ者になる。
7)計画を持つな。長期の計画を持つと、怒りと苛立ちと、そして空しい失望と倦怠が生まれる。
8)自信を持つな。自信を持つから君の仕事は煙たがられ嫌がられ、そしてついには誰からも相手にされなくなる。
9)頭は常に全回転。八方に気を配って、一分の真実も語ってはならぬ。ゴマスリとはそのようなものだ。
10)摩擦を恐れよ。摩擦はトラブルの母、減点の肥料だ。でないと君は築地のドンキホーテになる。

電通という会社に問題が多いのは分かります。しかし、多かれ少なかれ、どの会社にも似たような問題はあるでしょう。
社内で少しづつ改善すべきことは改善していけばよい話。
鬼十則は、社員を縛る憲法ではありません。心構えの表現としては優れたものだと思います。
また、裏十則というのも、ユーモアがあってよいと思います。
こうした裏十則が存在すること自体、広告会社としての柔軟性であるかと思います。
目くじらを立てる話ではないように思います。最近話題の言葉狩りのように見えてしまいます。窮屈な社会が、さらに窮屈になるように思えてなりません。いかがでしょうか。