二十四の瞳

12月の暮に女優の高峰秀子さんが亡くなった。代表作は昭和二十九年作の『二十四の瞳』。以前にテレビで観たことがあるが、白黒ながら、小豆島の海の青さと輝く陽の光を感じさせる風景の中で、12人の子供たちと高峰秀子演ずる大石先生の輝く瞳が記憶に残っている。
物語は、新しく赴任してきた大石先生と十二人の一年生たちがめぐり合うところから始まり、それから二十年近くのちに、戦争後みなで同窓会を開くところで終る。
二十四の瞳というと、安西祐一郎著の『問題解決の心理学』(中公新書、1985年)を思い出す。同書は、われわれが生きていくなかで直面する大小の事態に、どのように対応する機能があるのかを、最新の情報処理的アプローチによる認知心理学によって、明らかにしていく。その中に「二十四の瞳」の十二人の子供たちの行動が事例として取り上げられている。問題解決の心理学―人間の時代への発想 (中公新書 (757))
けがをして学校に出られなくなった大石先生に会いたい一心で、先生の家まで8キロの遠き道のりを十二人の小さな一年生たちが、どのようにしてたどりついていったか。「問題はひとりでは解けない」と著者は言い切る。

私たちにとって一番大切なのは、まわりの人々との信頼関係と、それに基づいた役割分担である。

このときの経験が、12人の子供たちのその後の人生に活かされていくという。

問題を解くのに最も必要なのは、私たちが日常生活の中で得るひとつひとつの経験である。そして膨大な量の経験は、私たちの中に記憶され、必要に応じて使われるのである。

2011年、また多くの経験と問題解決の一年が始まった。
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