グリーンネイバーフッド

全米で最も環境にやさしい都市
全米で最も自転車通勤に適した都市
全米で最も外食目的で出かける価値のある都市
全米で最も出産に適した街

そのアメリカの都市はどこでしょうか。
それは「ポートランド」です。
それを知ったのが、今回取り上げる『グリーンネイバーフッド(米国ポートランドにみる環境先進都市のつくりかたとつかいかた)』吹田良平著(2010年刊.繊研新聞社)です。グリーンネイバーフッド―米国ポートランドにみる環境先進都市のつくりかたとつかいかた
これはという本は、読みながら心に響く箇所をマーカーやボールペンで線を引いて行くのですが、この本は、各ページの半分に以上にマーカーが記されてしまい、途中からマークをするのをやめるほど、私にとっては価値ある情報満載でした。

あるところには、あったのである。

都市開発の専門家である著者は、米国オレゴン州ポートランド市に出会って、都市再生の事例を発見しました。この本を読むと、日本や世界の今後の都市、生活、ビジネス、成長と環境との調和といったテーマに関するアイデアが生まれてきます。
ポートランド市の行政としての意向、かたや民間デベロッパー側としての意向という両者の業務分担がこの都市開発の鍵となります。

民間デベロッパーの力量が街のレベルを決定づける。デベロッパーのビジョネアーとしての人生経験、見識、審美眼、知恵、センスの総和=都市生活者力が試される。

これまでの都市の成り立ちとは「始めに産業(職)ありき」であった。…ところが今、職の有無より前に自分たちが住みたい場所を優先して街を選ぶ人々が現れてきた。「脱就業優先時代の居住地選択の時代」に、ポートランドが人々から選ばれるために、街はいったいどうあるべきか。

これを考えるのが、ポートランド市開発局。次世代の新しいお役所の姿でもあります。

郊外の庭付き一戸建てよりも都市のざわめきの中で暮らしを好み、適度な連帯感を保ちながら、フレッシュな農産物とコーヒーにこだわり、ハッピーアワー(バーやレストランが込み合うピークタイムの前の早い時間帯に飲料料金を割り引いてサービスすること。)を利用したフランクな社交が大好きでスノッブになりがちなところを根っからのリベラルと寛容とで中和させる術に長けた興味深い人たちである。

ポートランドは「クリエイティブシンカー」が棲むところ。クリエイティブシンカーとは、「創造的思考に長けた人」を意味します。
クリエイティブシンカーは、食べるものにもこだわる。サステナブルキュイジーヌにこだわるレストランの先端ビジネスがポートランドに展開されている。
またカーシェアリングや自転車といった交通の未来がこの都市から見えてきます。
この本は環境、21世紀の都市やビジネス、新たなライフスタイルに関心を持つ人たちに多くの示唆を与えてくれる一冊です。