横浜・伊勢佐木町「大沢屋」の半チャンラーメン

昨日、伊勢佐木町を歩いた。
年に数回、所用で出かけている。
もしかしたら若い人たちはこの地名を聞いたことがないかもしれない。
ある年代以上の人にとっては、青江三奈伊勢佐木町ブルース」を思い出すかもしれない。
同曲は1968年(昭和43年)の日本レコード大賞歌唱賞。
ちなみに大賞は「天使の誘惑」黛ジュン
新人賞にはピンキーとキラーズの「恋の季節」が選ばれた。
高度経済成長をひた走る日本のピークの時期であったかもしれない。
皮肉なことに、この「伊勢佐木町ブルース」で全国津々浦々に名前が知れ渡った頃から
伊勢佐木町の衰退がはじまる。
横浜では、横浜駅の西口と東口が整備され、「高島屋」と「そごう」が集客力をほこる。
横浜中華街の歴史は古く、世界有数の中華街として、365日観光客を集めている。
桜木町駅の海側は、「みなとみらい」地区として、近未来都市のランドスケープが人気である。
そうした周辺地域への注目の中で、伊勢佐木町は一気に地盤沈下をしてしまう。
伊勢佐木モールのウェブサイトでは伊勢佐木町を次のように紹介している。
伊勢佐木町は、江戸時代に埋め立てられた吉田新田の中心に誕生しました。
横浜の開港以降、ハイカラな舶来商品を取り扱う店があり、映画館、芝居小屋、飲食店などが軒をつらね、東京の銀座、大阪の千日前、京都の新京極と同じく多くの人で賑わいました。
どこにでもありあそうで、どこにもない…ちょっぴりロマン漂うこの町に、いつでも気軽に遊びにきてください。」
どこにでもありあそうで、どこにもない…ちょっぴりロマン漂うこの町。
今の伊勢佐木町の姿である。
昨日は、お昼時、70年以上にわたって伊勢佐木町を見つめてきた地元の人たちと
地元民おすすめの「大沢屋」の半チャンラーメンをいただいた。
同店は住所でいえば、中区若葉町3丁目。伊勢佐木モール5丁目から一歩、大岡川方向に入ったところにある。
どうということもない、昔ながらの懐かしい醤油ラーメンの味。
醤油ラーメン450円、半チャンラーメン600円である。
高齢のご主人と、奥様、娘さんの3人が切り盛りしている
10数席のカウンター席。
それでもお昼時ともなれば、少ないメニューでも、作るのは混乱する。
ファミリー3人が、お互いに、怒鳴りあいとは言わないが、確認の言葉が行きかう。
心配そうに見つめるお客たち。とはいえ、常連客ばかりである。
黙々と麺を茹でる80歳を超えたご主人、それを支える奥様とお嬢さん。
ファミリービジネスの原点がここにある。
同行した伊勢佐木町生き字引によれば、夕方には店を閉めてしまうという。
高齢のご主人には長時間の仕事は無理だ。
こうしたファミリービジネス。
後継者不足で、次々と店をたたんでいく。
しかし、ここ伊勢佐木町は、全国各地のシャッター通り商店街とは違う。
伊勢佐木町周辺には、多くの人口が控えている。
ちょっとした工夫次第で、多くの顧客を獲得する潜在力を持っているのである。
チャンラーメンを食べた後、コーヒー豆の店でコーヒーを飲み、
伊勢佐木生き字引の人たちと別れた後、伊勢佐木モールにある古書店数店を覗いた。
一杯のラーメン、喫茶店古書店めぐり。
なにか、はるか昔の学生時代にタイムスリップしたような気がした。
伊勢佐木町は、新しい時代に復活するという予感を感じた小さな旅であった。