イチローと宮本武蔵

イチロー選手のメジャーリーグ3,000本安打記録が日一日と近づいている。42歳のイチローの活躍には、アメリカでも驚異と称賛の声が上がっている。
イチロー選手の姿を見ると、なぜか宮本武蔵を思い出す。現代に武蔵が活きていたとしたら、イチローのような立ち振る舞いをしているのではないか。
宮本武蔵は13歳の頃から兵法、武芸のみちにこころだし、以後60数度にわたり諸派武芸者と戦い無敗を誇った。そして絶頂期は佐々木小次郎との巌流島の戦いである。武蔵29歳の時であった。
しかし、武蔵のすごいところは、この小次郎との戦いを経て次のように悟ったことである。「俺がここまで勝ってきたのは本当の意味で『兵法の神髄』を悟り身につけているからではなく、生まれつき武芸の才能にめぐまれて、自然と刀使いがうまかったためか、相手が未熟だったからに過ぎない。まだまだ俺は未熟であるもっともっと鍛錬して本物の強さに磨き上げなければならない」と永遠の修練の道を自らに課したのである。
そして、更なる弛みなき20年の修練を経て、武蔵50歳の時に「意図せずとも剣の極意が身に備わるまでの境地」に達したと語ったのである。武蔵が『五輪書』を書いたのは60歳。その2年後の62歳の時に死に旅立った。この五輪書は、武道だけでなく日常の諸事一般にも通ずる心構えと実践のノウハウが凝縮している。
イチロー選手にも、あと8年50歳まで活躍してもらい、現代に日本の武士の姿をよみがえらせてほしい。
<参考資料>
宮本武蔵 五輪書』 徳間書店 1963年
『永遠の武士道〜語り伝えたい日本人の生き方』多久義郎 明成社 2016年