川澄奈穂美選手のシアトル・レイン移籍から考えたこと

サッカー女子プレナスなでしこリーグINAC神戸レオネッサに所属していて、女子日本代表「なでしこジャパン」でも活躍した川澄奈穂美選手が、昨日米国女子プロリーグシアトル・レインに移籍することが発表された。
川澄選手は2年前にも期限付き移籍でシアトルでプレーしている。またすでにシアトルには同じ「なでしこジャパン」の宇津木瑠美選手が、最近フランスのチーム・モンペリエから移籍をしている。
すでに、シアトル・レインのウェブサイトでは川澄選手の歓迎ムード一色である。
http://seattlereignfc.com/
先日のエントリーでも触れたが、アメリカの女子サッカー熱は予想以上のものがある。リオ五輪の前にしたアメリカチームと日本代表チームの試合が、日本のテレビでも放映されたが、親善試合にもかかわらず、スタジアムは満席であった。
シアトルレインは毎試合youtubeで無料で試合をネットで見ることができるなど、チーム運営上の仕組みなど学ぶべき点は多い。とびぬけて優秀なる川澄選手は、プレーだけでなくこうした米国のプロスポーツ・マネジメントの詳細についても学んでくるのであろう。
川澄選手は、記者会見と本人のブログで「現チームでなかなか出場機会に恵まれないなかで、シアトルからオファーがあり、チャレンジすることとした」と語っている。
かつて澤選手をはじめ、なでしこ代表メンバーのほとんどがINAC所属であった時代は、まさに常勝軍団であったが、2年前に川澄選手が短期移籍した時期や、その後、澤選手が引退した後は、INACも低迷を余儀なくされている。なでしこジャパン全体として世代交代の時期である。
川澄選手の魅力は、プレーの俊敏さと同時に、毎日欠かさず更新されるブログである。それも、ユーモアのセンス、日常の生活の風景が余すところなく伝えられる。
http://ameblo.jp/nahomi-kawasumi/
川澄ファンは、プレーそのものだけでなく、その選手からのメッセージを毎日受け取ることができるのだ。否が応でも、その選手の人間性に触れることになる。わたくしも、あの2011年ドイツ・ワールドカップのとき以来、約5年間、川澄選手のブログを毎日欠かさず見てきた。毎日更新というのは簡単にできるものではない。ましてや日々トレーニングが欠かせないトップアスリートである。川澄選手は、当然のことながら使命をもってブログ更新を行っている。そして、つねに自分自身のことだけでなくチームのこと、女子サッカーのことを知ってもらおうという気持ちが伝わってくる。こうしたスポーツ選手はなかなかいない。
日体大からすぐにINACに入ったプロパー選手だけに、誰よりもINACへの思いは強いものがあるはずだ。しかし、世代交代の時期、30歳となった自らの行動で、後輩をはじめとして、女子サッカーにかかわるさまざまな人たちに、無言のメッセージを伝えたかったのではないかと想像する。
ブログのようなネットメディアを欠かさず更新するというルーティンは、あのイチロー選手のルーティンにも置き換えられることなのではないか思う。一日でも欠かしてしまわないようにという、自らのルールを守る気持ちは、大いに学ばなければならない。そして、その努力は、大きな力となって草の根のファンを増やしていく。すでに彼女のブログには多くの応援メッセージが届けられている。
ブログ文面から感じ取れる毎日の小さなことへのこだわり、それとなく後輩を叱咤激励する気持ち、そしてそれがセンスの良いユーモアで包まれている。
再度の渡米により、一段とこの川澄魂に磨きがかかることを期待したい。
直接関係はないが、かつて男子サッカーのブラジル代表でワールドカップ優勝を果たし、ジュビロ磐田でも活躍したドウンガ選手の著書『セレソンNHK出版の一節を、ここに記しておく。
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サッカーには、誰が見てもわかるような大きなミスが起こることはそうないが、小さなミスは山とあり、結局それが勝敗に結びついていく。細かなミスが原因で試合を落とすことは多い。代表同士の試合となるとなおさらだ。だがそうしたミスはつい見過ごされがちである。
サッカーにはミスがつきものだ。それを繰り返さないようにすることで、少しずつ上達していく。年上の人からも年下の人からも学ぶことはできる。逆に自分の立場が上だと思い不遜になってしまったら、学ぶことはできなくなる。
また私がグラウンドの中にいるとき、外にいるときでは別の人格の持ち主だということを理解してもらうのにも時間はかかった。グラウンドの中では初日から叫び、怒鳴り、叱っていた。ところがトレーニングが終わると急に冗談を言ったりふざけたりする。本当はいったいどういう人間なんだ、というわけだ。(同書125ページより)
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