突き抜けたイチロー

kohnoken2005-12-29

日経ビジネス新年合併号は、新年特別対談として、マリナーズイチロー選手とスターバックスコーヒー会長のハワード・シュルツ氏の対談記事を巻頭に掲載している。なかなかユニークな企画だと思う。
イチロー選手は、まずハワード会長の「偉そうにしない」姿勢に驚いたという。日本では年下の人間に上からものを見るような態度で接してくる人が多い中で、ハワード会長は、自分のところまで下りてきてくれるところが印象的だという。
野球界の常識と言われていることに反抗し、独自のスタイルを築いてきたイチロー選手だが、基本思想は驚くほどオーソドックスである。たとえば次の言葉。

高いところへ行くには、下から積み上げていかなければなりません。常に近い目標を持ち、その次の目標も持っておく。そうしてこそ遠い目標もいずれ見えてきます。実はそれが近道でもあるのです。どこかを省いて遠くに行こうとする人は、怖さを知らない。挫折感を味わうことになるでしょう。

一見つまらないように見える基本理念だが、現実に実行することは難しい。こうしたイチロー選手の真剣な姿勢にシュルツ氏は尊敬の念を抱くと語っている。スポーツと企業経営の共通点を二人の偉大な経営者と選手はよく分かり合えていると思う。シュルツ氏の学ぶ姿勢はさすが急成長したスターバックスの経営者だけのことはある。
最後に、来春開催されるワールドベースボール・クラシックについてイチロー選手は並々ならぬ決意を語っている。

サッカーのワールドカップのように、あの大会に出るのが世界最高の栄誉だというようにならないといけない。今回の開催がそのきっかけになるのを、僕は望んでいます。最初からそうなるのは無理として、30年か50年かかるのかわからないですけれども、積み重ねていってほしい。開催してみてファンも来ませんし、お金も儲からない。思っていたようにいかないからといって、やめてしまったら問題です。成果がすぐ出なくても、やり遂げられる強さ。これが求められています。

どうやら、イチローは日本のプロ野球はおろか、MLBすら突き抜けてしまったようだ。
シュルツ氏は、「イチローの登場は、米国におけるスポーツへの威信を取り戻したと思います。」と賛辞を送っている。目の前の目標から始まり、30年後50年後の目標まで見据えている。何年後になるかわからないが、ワールドベースボールクラシックが隆盛を誇るようになった頃、そのセレモニーに引退したイチローの姿があるかもしれない。いや日本チームの監督として試合に臨むイチローの姿が思い浮かぶ。
まずは来春のWBCでのイチロー選手の活躍に期待したい。
(画像)マリナーズスターバックスの本拠地シアトルの街の風景http://www.tel.co.jp/cn/magazine/vol14/city.html