ラジオの時代

東名高速を土曜の午後、3時から4時に走る。カーラジオからは、文化放送伊東四郎吉田照美 おやじパッションが流れている。今日の放送は、今年8月に亡くなった「阿久悠」特集だ。
伊東四郎さんが阿久悠さんの思い出を語る。てんぷくトリオのコントのシナリオを書いていた阿久さんが、今度作詞を始めるようになったということを伊東さんに話していたということだ。
阿久さんの作詞家第一作は、ザ・スパイダースの「モンキーダンス」(1965年)ということになっているが、自分(伊東さん)が阿久さんから聞いたのは、由美かおるの歌だ、とのことだ。
リスナーからも、その歌が聞こえていた風景を交えて、リクエストが紹介される。自動車学校に通うマイクロバスの中で毎日流れていた「熱き心に小林旭)」や、高校を卒業して上京してきて、いつも喫茶店に流れていた「また逢う日まで尾崎紀世彦)」。
そして、勝手にしやがれ沢田研二)、、あの鐘を鳴らすのはあなた和田アキ子)、北の宿から(都はるみ)等、阿久さんの名曲が流れる。松崎しげるが歌った西武ライオンズの応援歌「地平を駆ける獅子を見た」が阿久さんの作詞だということを始めて知った。
阿久悠著『日記力「日記」を書く生活のすすめ』講談社+α新書(2003年)を読み返してみた。
その本のなかで阿久さんは、伊東四郎さんを絶賛してる。真っ裸でやってきて世間の目に曝されてきた伊東さんの悪相を。舞台役者は厚着、厚化粧、しかもシェークスピアの後ろ盾もある。しかし、バラエティーやコメディーの人たちには、そういった後ろ盾は一切ない。テレビに四十年かかわってきて、そうした残酷さを超えて生き残ってきた数少ない役者として伊東四郎さんを阿久さんは称えている。
ラジオ番組・おやじパッションの最後で、伊東さんは阿久作品として「ジョニーへの伝言」をリクエストした。ペドロ&カプリシャス時代からの変わらぬ歌声の高橋真梨子さんを作詞家の阿久さんとともに伊東さんは絶賛する。
このみずみずしさを失わない伊東さんの感覚に脱帽だ。
阿久さんは、上記の著書の中で「21世紀は映像催眠の時代」と言っている。映像に騙されるなということだ。
ラジオは、さまざまな思い出をよみがえらせてくれる。映像はないが、聴く人の頭の中に映像をよみがえらせてくれるラジオは21世紀のメディアに躍り出るのではないか。
(注)今回は映像に騙されないように、画像はなし。