現場力と経営力

昨日、青山さんのことを書いた。
青山さんが木曜レギュラーをつとめているラジオ番組・ニッポン放送「ボイス・そこまで言うか」の月曜日のコメンテイターは勝谷将彦さんだ。
勝谷さんの有料メルマガを読んで、あることを考えたので、今日はそのことについて書いてみる。
ちなみに、上記勝谷さんのラジオ番組は平日の午後4時から放送で、なかなかリアルタイムでは聴けないので同放送のウェブサイトにあるポッドキャストで、放送後に、ほとんど毎週聴いている。
勝谷さんは、先週まで自らの費用とリスクでウクライナに一人で取材を試みた。ドネツク州知事との単独会見、親ロ派とウクライナ軍との戦いの最前線で、みずからビデオを回し、死を覚悟の上で貴重な映像をネット上でフリーで公開している。
じつは、昨日紹介した青山さんと学生時代に学んだサークルは経済研究にかかわるサークルで、来年サークル創立百周年を迎える。100年前、創設メンバーであったのが高橋亀吉氏である。高橋亀吉と言っても、ほとんどの人は「その人、誰?」と、思われるかと思う。2000年に東洋経済が著名人に20世紀でもっとも信用できるエコノミストは誰でしたか、というアンケートを行い、金森久雄、下村治、石橋湛山らをおさえて、1位になったエコノミストである。
高橋亀吉の思想は、第一に現場主義、第二にその現場から得られた情報をもとに自ら考えて理論化するということである。
エコノミストと経済学者の違いは、エコノミストはまず現場ありき、経済学者はまず理論ありきである。もちろん、役割分担があるので、現場と理論のどちらが正しいというのではなく、現場と理論の融合が正しいのである。
さて、勝谷さんの有料メルマガの一節である。

18時便のANAだ。いまや当たり外れもあまりなく、羽田と伊丹の間のANAといえばまずB777(劣)。どんどん顧客の気分を害しながら飛んでいるのがわかっているくせに、止められない企業というのも珍しいというか、気の毒というか。しかし最近、洒落にならないことに私は気づいてきた。
 しつこいほど書いているのでご存じと思うがB777(劣)のテーブルは、子どもやお年寄りなら引き出せないほど重い一枚作りで、まだ指をはさむ事故が起きていないのが不思議なほど。CAもよくわかっていて「お手伝いしましょうか」と私のような元気(なはず)の客にも声をかけたりする。しかもカップホルダーがなく、表面はよくすべる。これになってから私は怖くて機内食の味噌汁は断ることにしている。フツーに昔のように二つ折りのテーブルにしてカップホルダーをつければいいだけなのに、何を考えているのか。
 当初から私はちょっとイジワルに予想していたのだ。「これ、そのうち自重で壊れていくよな」と。だってバカバカしいほど重いものを、一カ所のアームだけで支えているんですよ。重心はずいぶんと前にあって、アームにはかなりな負担がかかるはずだ。荷物をすべて頭上にとりあげて「仕事禁止」の地獄なのだが、それでもパソコンでもやる客がいれば、負荷はもっとかかるだろう。
 はたして昨日。私が引き出したテーブルは明らかに前傾していた。角度にして数度かも知れないが、ワインのボトルを置くとスーッと前方に滑っていく。CAの前でやってみせると「あっ、整備に言っておきます」。「でも、ここだけじゃないでしょ」と言うと困った顔をしてみせた。「してみせた」のである。無言のメッセージだ。もっとも気の毒なのは彼女たちなのだから。
 乗り込んですぐに手もと灯がつかないので言うと「あっ、スイッチ入れてきます」。大丈夫かなあANA。手もと灯だからスイッチ入れ忘れてもいいけど、飛行に関するそれなら、たいへんだ。世界を飛びまわったこの8月は、ホントに数えきれないほどの航空会社を利用してきたがそれでもANAに乗るとホッとする。たがらこそしっかりして欲しい。

かつて話題になったビジネス書として『真実の瞬間』がある。スカンジナビア航空の経営立て直しと航空機の顧客と航空会社スタッフとの現場の接触について語られたものである。
上記勝谷さんの一文は、まさに「真実の瞬間」である。
高橋亀吉の思想、勝谷将彦さんの一文、から私は次のように考える。
・勝谷さんも青山さんも、現場の最前線にリスクをかけて飛び込み、そこからみずからの思考のもとで、理論化を試みている。これこそ高橋亀吉の精神である。
・現場力は大事である。すべての根本はそこにある。
・日本の企業や文化、技術、教育などのあらゆる場面で現場力の真髄である職人力とでもいうべきものが失われつつある。
・しかし、まだまだ長い歴史と伝統の中で現場力や職人力は、途絶えてはいない。
・問題は、そうした現場力を本来サポートし、その一つ一つの現場の現象のなかから理論化を試みる経営力の欠如こそが憂慮すべきこと思う。
・私自身は約30年、シンクタンクコンサルタント会社の一員として、数々の企業や行政機関、各種団体に接してきた。そこで得られた考えとしては、現場力より経営力の弱さである。
・だからといって経営層といわれる人々が過剰に現場に介入すべきと言っているのではない。経営層の役割は、現場の声を聴き、悩みを聴き、現場の力を理解評価し、そうした現場の力を、今以上に発揮できるように環境を整えることである。
そして、大きな理想、大きな使命を、自らの言葉で現場に向けて発信し続けることである。
そんなことを勝谷さんの一文で、教えられた。
有料メルマガから少々長文を引用したので、勝谷さんのメルマガ読者拡大のために貢献しないといけないので、勝谷さんサイトを紹介させていただく。
http://katsuyamasahiko.jp/