人工知能と経済の未来

21世紀は人工知能の世紀だといわれている。
人工知能とは、コンピュータに知的な作業をさせる技術のこと。
身近なところで話題になっているのは、セルフドライビング(自動運転車)であろう。2020年の東京オリンピックを目途に実用化が目指されている。

最近、『人口知能と経済の未来(2030年雇用大崩壊)』井上智洋(文春新書)が
刊行された。人工知能の研究をした後にマクロ経済学を学んだ筆者が、人工知能の今後の展開概要をわかりやすく予測すると同時に、人工知能が経済に与える影響を考え、「ベーシックインカム」の社会保障政策をとるべきという提言をしている。

今後の人工知能の進化ステップを「特化型人工知能」「汎用人工知能(全脳アーキテクチャ方式)」「汎用人工知能(全脳エミュレーション方式)」の三つに分ける。セルフドライビングや自動通訳技術などは、特定分野に特化した人工知能で、この影響は大きいとは言いながら、それらの変化が些末な出来事に見えるようになるのが、汎用人工知能の登場であるという。汎用人工知能は人間のように様々な知的作業をこなすことができる人工知能である。

この汎用人工知能は2030年ごろに開発のめどが立つといわれている。
その結果、第4次産業革命とも呼べる劇的な変化が訪れることになる。
著者は「人工知能に仕事を奪われ、職に就けるのはたった一割」という大胆な予測をする。
そして「社会保障としてBI(ベーシックインカム)を導入すべきだ」と提言している。
すでに世界は開発競争に入っており、その技術を生かす国が世界のヘゲモニーを握ることになるという。

これからの10数年の近未来、技術の変化は急速に進む。そして、それに対応して経済のシステムも変化をしていく。
いつも未来は、恐ろしいようでもあり、楽しみでもある。
人工知能という極めて先端的で難しいと思われるテーマをたいへん平易な解説で書かれているこの新書をきっかけに、技術と経済・社会のあり方をさまざまな立場の人々が議論できるようになるだろう。
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