【書評】『旅する巨人』佐野眞一

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宮本常一と渋沢敬三 旅する巨人 (文春文庫)
科学者で中部大学教授の武田邦彦先生が発信する論説には
たいへん刺激を受ける。その意見の多くは賛同するが、ある時は反発もする。
武田先生は固定概念を覆すきっかけを与えてくれる。
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8月の暑い日が続く毎日。
武田先生は、夏休みというのは止めたほうがよいのではないかという。
戸外で活動しやすい秋にこそ、秋休みをとりいれ
日本国民が外での活動を行うということを推奨してはどうかということである。
日本には四季があり、夏は湿気を伴った暑さがあり、冬は厳寒の日が続く。
しかし、現代は暑い夏も寒い冬もエアコンが対処してくれる。
この夏休みもエアコンの効いた室内で過ごすべきだと武田先生は言う。
夏だから外で活動というのは固定概念ではないのかというのである。

この考えの基本には、エネルギー制約というのはない、という武田先生の科学者としての考えがある。
温暖化はしていない、CO2削減は、ばかばかしいことだという武田先生ならではの考えがある。
ちなみに、ゴミの分別についても武田先生は厳しい批判をしている。

暑い夏は、エアコンの効いた室内で過ごすのが人間にとってよいことだ。読書の秋というが、むしろ、エアコンの効いた快適な室内で
「読書の夏」ということこそ、現代的ではないかと思ってしまう。
これからいくつか夏の読書のすゝめを書いていきたいと思う。

<読書の夏シリーズ? 『旅する巨人』佐野眞一 文春文庫>
民俗学者というと柳田国男を思い浮かべるが、宮本常一はその柳田の伝統を受け継いだ民俗学者である。
マーケティングとうビジネスの世界ではフィールドワークを重視する。しかし、宮本常一はビジネスともマーケティングとも、また既存の学問の世界とは離れて、徹底して日本全国を歩き回り。市井の人々の生の声、そして過去の人々からの口伝の情報を集めて分析した。
ノンフィクション作家の佐野眞一は、この宮本と、そのパトロンである渋沢敬三を題材に評伝を描いた。
自分自身、現場を知るジャーナリストであると称し、首都の知事選に出馬し、無残な敗北をした人がいた。
こうした似非ジャーナリストが跋扈する現代。
徹底した現場主義を貫いた宮本常一、その宮本の力を見抜いた渋沢敬三、そして彼らの活動を支援し支持した名もなき多くの国民。
そうした市井の人々が日本という国を支えてきたのだということを
暑い夏の日々に感ずることができた。