対話力

日曜日に、次の二つのインターネット上の対談動画を見た。
いずれも倉山満氏が大御所といわれる日下公人氏と加瀬英明氏の二人の大先輩と対談するという番組である。

●6/17(金)日下公人「日本出動」第10回 ゲスト:倉山満 〜日下公人先生にお話をうかがってみよう〜
https://www.youtube.com/watch?v=Na658FWi-Jw
日下氏のユニークな視点は、かつて竹村健一氏や渡部昇一氏と日曜朝のテレビ番組に出ていた30数年前から健在である。普段のDHCシアター番組では、歴史家の宮脇淳子氏との対談は別として、女性キャスターとの対談では、キャスターとの知識の差がプロ野球選手と少年野球選手以上の差があって、日下氏の魅力が発揮されていなかった。今回の倉山氏との対談は、はじめから日下氏が倉山氏に教えを乞うという態度で驚いた。案の定、この対談は倉山氏がいつもの調子で議論をリードしていく。倉山氏の力を感じると同時に、日下氏の事前準備、おそらく40歳程度年下の倉山氏への尊敬の気持ちが伝わってきた。よき後継者が出てきたと日下氏も感じられたのではないだろうか。

●【録画版】加瀬英明×倉山満 vol.0 日本人として保守としての心得を問う新番組!打合せ現場より生放送!
http://ch.nicovideo.jp/ch2620
日下氏と並んで、重鎮といわれる外交評論家の加瀬氏。残念ながら今回の対談は全くかみ合っていなかった。対談というのはお互いの意見をただ述べ合うのではない。自分の意見を述べながら、違う意見に耳を傾け、自らの考えと異なるからといって否定して終わり、というのでなく、お互いの考えをさらにブラッシュアップさせることが重要であろう。そして、公開の対論であれば、視聴者に考えを深める材料を提起するということであろう。今回の対談では、加瀬氏が従来の自らの考えに固執して、新しい考えが倉山氏から提示されたときに、それを踏まえた議論にまで至らなかった。また、両氏以外に1人、女性司会者と思しき人がいるのであるが、これがまた、言葉は悪いが、あきれるほどの無知で、「京都御所って何ですか?」という感じである。この司会者を選んだ浜田マキ子プロデューサーの意図は何だったのであろうか。

年齢の高い低いにかかわらず、知識人といわれる日本人の「対話力」は、かなり弱いのではないか。
自分の意見と異なる言論に対してレッテル貼りをして、議論することを逃げる。したがって議論が深まることはない。結局、揚げ足取りや中傷合戦になってしまう。自分の意見を高めようという意識がほとんどない。
困ったものだ。
議論に窮すると、すぐ他者に依存するのも特徴である。この人がこう言った。このメディアではこう言っている、この学者の意見もこうだ、といった具合に。他者の意見を紹介するのは良い。しかし、メディアで活躍する知識人といわれる人たちであれば、そのときの他者は、よく吟味された信頼のおける人の意見でなくてはならない。そこで挙げた人物のレベルを視聴者は評価するからである。へたに大衆迎合的に他者依存をすると、おもわぬしっぺ返しを食らってしまう。
いずれにせよ、対談というのは力量の差がはっきり出てしまう。
ガチンコ勝負の対談が、さまざまな分野で展開されていってほしいところだ。