僕は人生についてこんなふうに考えている

インターネットの普及により、従来のメディアからは得られなかった情報を手にすることができるようになった。またブログやfacebookの活用により、自らの考えや日常を容易に発信することができるようになった。そこでの発信の積み重ねが発信者の人物像を作り上げていく。良いことともいえるし、恐ろしいことでもある。
実際の人間関係でもそうであるが、日々の信用の積み重ねが、強固な信頼感を形作っていく。小さなこともおろそかにしてはならない。
小説家である浅田次郎氏は、作品の中から抜き出した言葉を集めた『僕は人生についてこんなふうに考えている』(新潮文庫)の中で、次のような一節を引いている。

僕は人生についてこんなふうに考えている (新潮文庫)

僕は人生についてこんなふうに考えている (新潮文庫)

人生にはチャンスが何度もある。毎日のように訪れる小さなチャンスは、掴むも掴まざるもその効果はたかが知れているが、結果の積み重ねがさらなるチャンスを招来することは確かだ。そしてやがて、一生に三度しかないと言われるビッグ・チャンスがめぐってくる。(「勇気凛々ルリの色 四十肩と恋愛」より)

日々、情報に接し、また自らも発信する。日々人に接し、関係を築いていく。その結果の積み重ねの中からチャンスが生まれる。ものごとに偶然にみえるものは、日々の積み重ねによる必然ともいえる。
小説家とは何かを知るために大学に進学せずに自衛隊に入隊し、そこの意図した回り道での経験から喜びと悲しみの織り交ざった数々の名作品が生まれた。浅田さんのエッセイ集『ひとは情熱がなければ生きていけない(勇気凛凛ルリの色)』などは、この小さな結果の積み重ねであり、作者の人間の深みを感じさせてくれる。