僕らはまだ、世界を1ミリも知らない

日本経済の失われた20年ということが言われているが、この20年間に大きく変化した経済環境の変化は、デジタル化とグローバル化であろう。
デジタル化はパソコンの普及とインターネット社会である。グローバル化は、企業活動における国境という壁が強固なものではなくなったということである。
そしてデジタル化とグローバル化は、それぞれ別々に起こった動きではなく、それぞれ関係が深い。デジタル化がグローバル化を推進し、グローバル化がデジタル化を推し進めたのである。
どの時代においても、新たなイノベーションの担い手は若者であった。

僕らはまだ、世界を1ミリも知らない

僕らはまだ、世界を1ミリも知らない

その若者の世界一周紀行の書『僕らはまだ、世界を1ミリも知らない』太田英基(いろは出版)2014年刊を読んだ。著者の太田さんは29歳。約2年間かけて世界を一周した。
世界一周をするにあたって、まずはフィリピンで英語留学を行う。いまやフィリピンは英語留学のメッカである。太田さんは、北米から世界一周を始める。シリコンバレーでグーグルやアップル社を訪ね、社員食堂のランチビュッフェの充実やその料理人の年収が3000万円であることに驚く、その後、ラスベガスの浮浪者の言葉、NYのゴスペルを体験した後に、中米各国を訪ねる。グアテマラホンジュラスニカラグアコスタリカベリーズといった中米での体験は、本書の一番の目玉でもあると思う。日本人にとってはなじみが薄く、旅行先としてもメジャーではないこのエリアでの体験は面白い。
その後、キューバに渡り、その後は南米の各地を訪ねる。
ブラジルからアフリカ大陸に。モロッコ、エジプト、ケニアウガンダルワンダブルンジタンザニア。世界で最も危険な地域であるブルンジをはじめとしたアフリカ各国での体験は何物にも代えられない貴重なものになったであろう。
アフリカの次はヨーロッパである。スイスの物価の高さ、ドイツにおけるライドシェアと呼ばれるヒッチハイクの深化系、そしてウクライナチェルノブイリ観光ツアーは東北出身の著者には大きなインパクトを与えることになる。
ヨーロッパから中東諸国をめぐる。世界で最も親切な国であったのがイランであったこと、イスラエルでは、旅の序盤の中米グアテマラで同じ旅行者として知り合ったイスラエル人女性を訪ねて連絡を取ったところ、「カッサムがたまに来るけど、ぜひ会いましょう」というメールの返事が来て、カッサムの意味がわからなかったが、カッサムロケット弾のことであったことに驚いたという話。
その後、インド、バングラディッシュ、東南アジア諸国、中国、韓国を経て日本に戻る。
著者は、この2年間の世界一周のほとんどを「カウチサーフィン」という自宅無償提供のネットを通じた仕組みで宿泊している。旅行の先々でtwitterなどで情報発信し、仲間を探し世界各地に友人のネットワークを築いていったのである。
デジタル化とグローバル化は企業社会の話だけではない。個人の活動・生活においてもこの20年の間に起こった大きな変化である。
2年間の世界一周の旅、こうした経験を積んだ若者が多く出てくることで、世界の経済や社会、政治、文化に大きな進歩が生まれることだろう。若者に負けずに、中高年世代も世界に目を向けるべきであることを強く認識した一冊となった。
The world is smaller than we think.However, it's deep.
Travel the world as a liberal arts!!!
See you someday, somewhere, somhow in this small world!!!