ジャポニスム

マネ、ドガロートレックルノワール、カサット、ゴーギャン、モネ、ゴッホ… 西洋印象派の大家たちを魅了したのが日本美術であり、とくに奇想天外な浮世絵師の技法は西洋絵画の創造に大きな影響を与えた。
現在、東京・世田谷美術館で「ボストン美術館・華麗なるジャポニスム展」が開かれている。東名高速道路の東京インターのある世田谷・用賀にある緑深い公園の中にたたずむ美術館である。行きかう高速道路の喧噪を忘れさせてくれる空間である。
真夏の暑い日、美術館の中は作品の管理と観覧者のために、絶妙な温度コントロールがなされている。
●歌川国貞・歌川広重「当盛十花撰 夏菊」

見慣れた浮世絵をはじめとした日本美術品の数々と、これも見慣れた西洋絵画が「日本趣味」「女性」「シティライフ」「自然」「風景」の5つのテーマで対比させられて展示されている。
ふと米国の<沖仲士の哲学者>エリックホッファーの言葉を思い出す。(「魂の錬金術」作品社、165〜166頁)

社会の活力は悪影響を及ぼしたり、アイデンティティを損なったりせずに、豊富に事物を借用できる能力に垣間見られる。西洋は他の文明から多くの借り物をし、それを礎にして繁栄してきた。驚くべきことに1400年から1800年までは、東洋の西洋への影響は、西洋の東洋への影響より大きい。……
現在、アジアやアフリカ、ラテンアメリカ諸国が先進国から事物を借用することに対して示している嫌悪は、そうした国々の衰退の兆候である。社会的不良を起こすことなく、豊富に事物を借用できるほど活力があるのは、日本だけである。歴史の初期においては、エジプトもクレタもインドも、シュメールから自由に事物を借用し、独創的で活力に満ちた文明を発展させたのである。

日本人に限らず、それぞれの世界の人々のもっとも強力なセールスポイントは、母国の風土と歴史の中で育まれてきた美的感覚であり、国際市場で通用する武器となるのは、それぞれの国特有の繊細な感覚と、他の文化を取り入れてアレンジしなおす創造的活力である。
さて、われわれ現代人は、この浮世絵の歴史と西洋絵画から何を学び、そこからインスパイアされて何を生み出していけるのだろうか。
歌川広重「名所江戸百景大はしあたけの夕立」

魂の錬金術―エリック・ホッファー全アフォリズム集

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