大手町、丸の内、八重洲

桜満開の4月卯月の午後、東京・大手町に出かけた。
丸善のあるオアゾの中の、ハヤシ(早矢仕)ライスで有名なM&Cカフェで、ある方と打ち合わせ。ちなみにハヤシライスは丸善創業者の早矢仕有的(はやし ゆうてき)が作った牛肉と野菜のごった煮に由来するとする説があるが定かではない。
その後、丸善の中でいくつかの本を探した。洋書売場でビジネス系の本を眺める。いくつかハッとさせられる本を見つけ、メモする。次に理工系図書売場へ。こんな内容の本があるのではないかと1か月前ぐらいからアマゾンで検索し探していても見つからなかったが、思い描いていたものに近い本があった。やはり、ネット検索だけでなく、リアルな大型書店に出かけることも大事だと思った。そして文庫本売場で吉川英治のマイナーな小説を探したが見つからなかった。これはamazonの古本で購入することにしようと思う。
丸善のビルにあるM&Cカフェは東京駅前であり、新幹線をはじめとした行き交う電車を見渡せる。東京駅周辺の風景はここ数年大きく変わった。大手町、丸の内、八重洲のエリアが東京駅を取り囲む。
大手町は金融機関が集中する。大手町のシンボルの一つであった赤レンガ色の東京海上火災ビル。就職シーズンになると学生が長蛇の列をつくり、マスコミに取り上げられることが多かったが、就活のネット活用が進み、同ビルに並ぶ風物詩もなくなり、このビルも周辺の高層ビルの中で目立たなくなってしまった。経団連ビル、読売新聞本社、富士銀行本店といったかつてのシンボルビルは立て替えられた。春のウキウキとするシーズンだというのに、地上を歩く人影は少ない。みんなビルの中に引きこもっているのだろう。なんとも冷たい風景が大手町には漂っている。
丸の内側に出ると若干風景は変わる。ビルの1階部分にブランドショップが入り、華やいだ雰囲気が醸し出されてる。歩道にあるベンチ、街路樹の演出効果も大きい。三菱村といわれかつて1970年代に爆破事件があった重苦しい雰囲気は感じられない。さらに下って有楽町エリアに入ると、若干、昭和の時代の雑踏がかすかに感じることができる。
東京駅を挟んで八重洲エリアはどうか。大丸の入っていた駅ビルがリニューアルし、周辺には新しい高層ビルが立ち並ぶようになった。しかし、八重洲から日本橋にかけてのエリアは小さな飲食店が今でも軒を連ねる。チェーン店が増えたとはいえ、まだまだ居酒屋、寿司、中華、蕎麦、定食、喫茶など昔ながらの店が多く、昼時などは賑わいを感じるエリアである。
かつて、仕事で通っていた名古屋駅前に本拠を構えていたある総合商社の担当者の方が言っていた。
名古屋駅前という立地は、名古屋だけでなく東京や大阪からの結節点であり、出張で来られた際に気軽に立ち寄ってもらえる場所だ。そこで多くの方々から情報をもらい、こちらからもいろいろと相談をさせてもらった。
東京駅前、そこは日本で最も人が行きかう場所であり、さらに世界の人々が集まる場所でもある。工業社会から情報社会へということがいわれて久しいが、東京駅周辺は情報の結節点であるはず。しかし、現実にはコンプライアンス、情報漏えいといった風潮の中で、かたく外部との接触を閉ざしてしまっているようにも思う。これではイノベーションは生まれないし、縮小均衡あるのみである。
東京五輪などをきっかけに、東京という都市の潜在力を活かす、世界を揺るがすような大きな動きが出てくることを期待したい。