入社式の社長訓示の記事をみて

4月1日、多くの企業で入社式が行われた。社長をはじめとする経営トップ層は、新入社員に囲まれて満面の笑みを示す写真がメディアや社内報などで報道される。ある意味、経営層が1年のうちでもっとも優越感に浸れる瞬間かもしれない。
しかし、入社式は新人にとっては社長をはじめとする経営層を一瞬のうちに見定めるときである。この人たちは頼りになる存在かどうか、この入社式で決まるのである。
入社式の社長のメッセージは、はたしてよく考えられたうえでの言葉なのか、そのれとも誰かが考えたきれいな言葉を話すだけのものなのかどうか。すべての参加者の関心が社長や経営層に集中する瞬間であるので、怖い場面でもある。
そして、4月1日は、中間管理職にとっては空白の時である。入社式は儀式で、自分たちには関係ない、という意識が働くのが常である。
重要なのは、社長をはじめとする経営層が話すビジョンを各部門の責任者が、自らの言葉で、現実的な仕事の場面でどう翻訳してメンバーに伝えるかだ。
それができて、はじめて組織としての統一性が実現する。現場に近いリーダーであるほど、具体的な方針を示すこと。そして経営層は、そうした動きができるようにサポートを行っていくことが大事だ。
入社式というのは、単なる儀礼の式ではなく、組織にとって勝負となる本番の瞬間である。
以下、新聞各紙から主要企業の社長訓示を示しておく。⇒では、現場リーダーが翻訳して伝えるヒントを示す。
トヨタ 豊田章男社長
「お客様を笑顔にさせる車とはなんだろと一人ひとりが納得いくまで考えてほしい。」
⇒人が笑顔になるというときはどんな時かと考える心理学の視点から考えてほしい。新入社員教育が終わったときに皆さんでアイデアを1人10個提出してほしい。
●ローソン 玉塚元一社長
「高齢化などで、コンビニエンスストアには可能性がすごくある。」
⇒新入社員の皆さんは、1人100づつ高齢化社会のコンビニの事業アイデアを考えてほしい。その際に、30のアイデアは身近な高齢者から意見を聞いてほしい。
みずほフィナンシャルグループ 佐藤康博社長
「縦横斜めのコミュニケーションをとれば隠れたリスクを察知できるようになる」
⇒リスクというのは隠れていない。表に現れていて、だれもが気が付いているはず。それを組織としてどう対応するかだ。まずは、現場で感じたことを表に出すこと、そして集められた情報をどう組織に活かすかを具体的に考えてほしい。
三菱商事 小林健社長
シェールガスで政治的にも地政学的にも大変革が起きるだろう。われわれ三菱商事も変化しなければならない。」
シェールガス革命の中で、具体的にどのような新事業分野が考えられるか、すべても部門で考えてほしい。間接部門も例外ではない。新入社員は、具体的な事業計画を一つづつ考えてレポートを提出すること。
伊藤忠商事 岡藤正広社長
「新人は来る日も来る日も退屈なルーチンワーク。こんなはずじゃなかったとなる。ルーチンワークの積み重ねが大きな仕事を成し遂げる土台。」
ルーチンワークをまず、正確に締め切りを守って行えるようにしてほしい。そのうえでルーチンワークを効率的にできるような提案を、行ってほしい。1年後の今日、その提案を提出してほしい。