鬼平江戸処

鬼平江戸処」とは、東北自動車道の羽生パ−キングエリア(上り線)に12月19日にオープンしたばかりの商業施設である。なぜ、羽生か、なぜ鬼平か、なぜ江戸か、については下記の公式サイトなどを参照していただくとして、実際に訪ねてみての感想を述べてみたい。
http://oniheiedodokoro.driveplaza.com/main/index.html

鬼平池波正太郎
江戸をテーマにしたテーマパークは日光江戸村が有名である。鬼平江戸処は、さらに鬼平犯科帳の時代小説と、作者である池波正太郎に焦点を絞った。この絞り込みは新鮮な驚きであるが、それは高く評価したい。江戸全般ということではテーマは拡散してしまい、パーキングエリアという限られた空間の中では、かえってまとまりがつかない。鬼平に絞ったということで空間のコンセプトが明確になった。
●歴史と学習の旅
旅の良さの中核は景色と食事にあることは言うまでもない。それと同時に歴史を感じること、またそこで学習のきっかけを持つことが大事である。時代小説、時代劇は日本人にはなじみ深いとはいえ、鬼平犯科帳池波正太郎となると、その名前を知っている人は必ずしも多いとはいえ、実際に作品に触れた人は多くない。この「鬼平江戸処」を利用した来場客の何割かは、江戸の歴史・町民文化、池波正太郎の文学の世界に触れてみたいと思うことだろう。中高年を中心に歴史への興味へといざなう施設になるだろう。NEXCO東日本は池波正太郎著作権を管理する?オフィス池波と提携をしている。
時代考証を踏まえた細部へのこだわり
もちろん、博物館のような詳細な時代再現にはなっていないが、形ばかりの張りぼての江戸の町の再現ではなく、時代考証を踏まえている。高速道路のパーキングエリアの商業施設にしては今までのレベルを越えている。それは、ハードだけでなく、そこに働く店舗スタッフや施設運営といったソフト面でも江戸の良さを表現してくれるとよいのだが、これは今後の課題となるだろう。
なお、主通路上の空の演出は、お台場ビーナスフォート新横浜ラーメン博物館の演出を思い出してしまい、少々安普請の感じがした。
●考え抜かれた出店店舗ミックス
鬼平犯科帳の小説に登場する軍鶏(しゃも)鍋の店「五鉄」は人形町の「玉ひで」がモデルといわれているが、この玉ひでが提供する料理や、神田のそばの老舗「神田まつや」が監修する「そば」の店など、魅力的な店が軒を連ねる。高速道路のパーキングエリアには欠かせないラーメン店は、江戸のコンセプトにはなじみにくいが、ここは池波正太郎が足しげく通った「日本橋たいめいけん」監修の江戸風中華そばという形で表現している。
●繁忙時の心配
話題性と都心に近いパーキングエリアということで、来場者数の増大、とくに観光シーズンの繁忙時の混雑が心配である。施設の誘因力からすると、物理的なスペースが狭いように感じる。とくに入り口に近い場所にあるお土産の店、そこから奥へとつながる中央通路は、混雑時にはおそらく入場制限をせざるを得ない状況になるだろう。
●高めの価格設定
日本そばやラーメンはさすがに1000円を超えることはないが、軍鶏料理やうなぎなどは当然、1000円を超える価格帯になる。料理の内容がよければこの価格帯でも利用者はつくだろう。
元来、スペースの広いサービスエリアは観光客中心で飲食メニューも観光客向け。スペースの狭いパーキングエリアは、トラックドライバーなど商用客を引き込み、メニューもボリューム勝負というのが旧・JHのSAPA(サービスエリア・パーキングエリア)の施設運営の基本であった。しかし、羽生の上り線PAは、このリニューアルで完全に観光客志向に舵を切っている。羽生の先の蓮田SA(上り)が、老朽化し、SAにもかかわらず商用客を中心とした施設の特徴を強めていくだろう。

新装版 鬼平犯科帳 (1) (文春文庫)

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