日本の自画像

kohnoken2009-05-16

世田谷美術館で「日本の自画像展」を観る。http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html
戦後日本を代表する写真家である木村伊兵衛土門拳田沼武能細江英公らの総勢11名がとらえた1945年から1964年までの日本をモノクロ写真で写した出した写真展だ。写真はさりげない庶民の日常の一瞬をとらえて、その一枚で、その時代を描き出す。終戦後から東京オリンピック開催の1964年までの昭和20年代〜30年代というのは、日本が最も躍動、変化をした時代だといえる。写真の一枚一枚からその息吹が伝わってくる。とくにモノクロ写真というのは、なんともいえない郷愁を誘う。一枚の写真から人や風景のストーリーを否が応でも想像させる不思議な力がモノクロ写真にはあるように思う。
この昭和の20年代・30年代に豊かに存在はしていたが、いまは消え去ったもの。また、その時代にはなかったが今の時代にあらわれてきたもの。こうした比較をしてみると面白いと思う。意外と今の時代に失ってしまったことの多くがこの写真展の時代にあったような気がしてならない。たぶん、それは写真の表面にはあらわれていない、「人のこころ」のようなものなのだろう。決して、写真はそれを表には映し出していないが、そこに映し出された人の表情や、街や農村の風景の表情のようなものから、現代が失ったものを読み解くことができる。
「人間を描けば社会が見えてくる。」という映画監督の小津安二郎さんの言葉がふと思い出された。http://d.hatena.ne.jp/kohnoken/20090312
じわりじわりと見る人の心に迫ってくる写真展だった。
(画像)田沼武能(たぬま・たけよし)《SKDの踊り子. 浅草国際劇場上,東京》 1949年、世田谷美術館Webサイトより。