漫画家「ちばてつや」さんの言葉

kohnoken2009-04-24

日本経済新聞の4月22日夕刊の文化欄に漫画家ちばてつやさんのインタビュー記事が出ていた。ちばてつやさんとは何とも懐かしいお名前である。一般には「あしたのジョー」の作者として有名であるが、私は「紫電改のタカ」のほうが思い出に残っている。
「不器用な人間が好き」と、ちばさんは言う。

私は漫画で、あんまり優れた天才児は描いていないんですよ。地味で不器用で、だけど一生懸命にこつこつと努力する人間を描いてきました。

輝かない人間が頑張って十両になるのは、才能のある人が横綱になること以上の喜びがある。人間ってそういうものに感動するんだよというメッセージを、これまで伝えてきたような気がします。

ちばさんは、2004年から大学の教授としてマンガ専攻の学生を教えているとのこと。

漫画制作の課題を出すと、描くのがとても遅い子がいます。いつも締め切りを守れない。さぼっているのなら怒りますが、違うんです。描いては消し、描いては消し、何回も描き直して一生懸命に良いモノを作ろうとしている。

不器用だけど人一倍努力する子にもっと気が付いてほしい。

地味なところを一生懸命に頑張った子が、やっぱり伸びていきました。漫画家になれなくても、ほかの世界で人に信頼される仕事をして、地に足が着いた生き方をしている。私たち大人は、不器用な子をもっと褒めてあげたいですね。とても大事なことだと感じます。

マスゴミと揶揄される大新聞。日本経済新聞の経済記事は、寄せ集めの切り張り記事だとまでは言わないが、日々消費されていく。文化欄の記事は時として、しんみりと心に残る。かつての日本の良さはこのことではなかったのか。ちばてつやさんという巨匠だけに、その言葉の意味は重い。
(画像)紫電改のタカ(中公文庫)表紙