礼儀作法入門

山口瞳氏著による礼儀作法を堅苦しくなく書いたものである。酒の飲み方のところの「盃をどう持つか」などは、なるほどと感心させられる。また、次のような文章も味わい深い。礼儀作法入門 (新潮文庫)

その校長は、こんなことを言った。
校庭に一人だけ、ポツンと生徒が立っている。たとえば土曜日の暮れ方であったとする。…校長は、そういう姿を見るとたまらなくなる。その生徒は、家庭的に恵まれない子供である。あるいは体の丈夫でない子供である。あるいは自分の志望する学校に進学できなくて、浪人中であって、母校にふらふらと入ってきてしまった生徒である。
校長は、そういうとき、仕事を放りだして校庭へ駆けてゆくという。
そうして、「おい!」と声をかける。「おい、××君!どうしている!」。肩をたたくこともある。「おい!××君、勉強しているかい?」。
どうしてもそうせずにはいられないそうだ。そうして、教育とは、教育の役目とは、そのことに尽きるのではないかと言う。教育とは生徒に声をかけてやることではないか。校長は、むしろ絶望的な調子で、それ以上のことはできないと言った。
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私は、在学中にも、卒業の後も、おたがいに、「声をかけあう」のが大切であり、それが学校の礼儀作法であるような気がしている。(諸君!これを読んで、そうだと思ったら、在学中にお世話になった恩師に手紙を書こう!)