花粉の運び手 The Cross-Pollinator

米国IDEO社のトム・ケリーは、『イノベーションの達人!』鈴木主税訳(早川書房)で発想する会社を作る10の人材の特徴を挙げている。人類学者、実験者、花粉の運び手、ハードル選手、コラボレーター、監督、経験デザイナー、舞台装置家、介護人、語り部がそれである。
イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材ここでは、3番目の「花粉の運び手」に注目したい。
昨日のエントリーで、植物の種が生き延びるために異質の花粉と混ぜ合わすことが大事だということを取り上げた。イノベーションでも他受粉を実現させるには、虫や風の役割を演じる「花粉の運び手」の存在が重要である。この運び手には関連しそうもない複数のアイデアやコンセプトを並列させることによって、新たに優れたものを生み出す能力がある。他家受粉のきっかけを掴んで実現させてきたのは好奇心と柔軟な頭脳だ。

花粉の運び手は、研究室で使われるごとき難解な専門用語の意味をとらえて、誰にでもわかる日常の言葉に置きかえる。出張でも遊びでも、旅をして戻ってきてから旅先で見たことと同時に学んだことも伝える。多方面に関心があって、しかもそれを隠さないので多彩な経験が得やすく、したがってひとつの経営課題からアイデアを拝借して思いもよらぬ別の状況に生かすのがうまい。・・・花粉の運び手は、さまざまな分野での経験をもち、複数の強みと関心を組み合わせることによって独自の視点を育んでいく。

百年に一度の経済危機の中で、花粉の運び手をはじめとしたイノベーターの存在が経済活性化のカギを握る。