オオイヌノフグリ

kohnoken2009-03-08

家の近所を歩き春を感じさせる草花を探した。あるマンションの植え込みの中に青い小さな花がひっそりと咲いていた。たぶんオオイヌノフグリだろう。
田中修著『雑草のはなし』(中公新書)によれば、多くの植物の花には、オシベが複数本あるのが一般的だ。それは、植物というのは子孫(タネ)をつくるという大切な仕事を風や虫に託すのが不安で、多くのオシベを持つことで、多くの花粉を作れるようなっているのだという。
しかしオオイヌノフグリはオシベが二本しかないにもかかわらず、ほぼ100%タネができるらしい。その理由は夕方、花が萎れる頃に、オシベとメシベが寄り添ってくっつき、自分の花粉を自分のメシベに付けて受粉、受精をするから。メシベは花が開いたときには、ほかの株の花粉が付いてほしいものだ。植物はできるだけ、自分の花粉が自分のメシベにつくことを避けている。自分の花粉をつけても自分と同じ性質の子孫を残すだけで、「ある病気にかかりやすい」などの性質がそのまま子供に受け継がれてしまう。それに対して、いろいろな性質を持つ子孫が残ると、いろいろな環境に耐えて、その生物種が生きて行くことができる。
多くの花では、めしべはオシベより背が高く、上にある。自分の花粉を受粉してしまわないようにである。しかし、花が萎れるまでにほかの植物体の花粉を受粉できなければ子孫は残せない。自分と同じ性質のタネでも、子孫が残せないよりまし、と考えて、夕方オシベがメシベにくっつくように曲がって受精し、一人でタネを作るのだ。オオイヌフグリは、こんな保険をかけている植物なのである。
同じ性質の子孫ばかりが増えていくと、環境耐性がなくなり、種が生き残れなくなる可能性があるということは、何か日本社会、とりわけ今話題の二世、三世の多い政治の世界にあてはめてみると、なるほどと思ってしまう。