語り合うことの大切さ

中央公論5月号は「知的整理法革命」と題して著名人たちの情報整理法を紹介している。登場しているのは野口悠紀雄梅田望夫外山滋比古佐藤優勝間和代茂木健一郎の6人。いずれも今最も売れ筋の面々である。この中で外山滋比古さんは懐かしい。同氏の「知的創造のヒント」講談社新書1977年刊は、渡部昇一さんの「知的生活の方法」講談社新書1976年刊とならんで当時よく読まれた。1983年に出版された「思考の整理学」が四半世紀を経た現在、文庫版でよく売れているという。同氏は記事の中で「語り合うことの大切さ」を語る。
中央公論 2008年 05月号 [雑誌]

かつて京大の先生たちが東大を圧倒して総合雑誌なんかでもバンバン執筆していた頃がありました。京都学派です。彼らは夜な夜な飲み屋に行っては法学部も理学部も文学部も入り混じって一杯やりながら丁々発止の議論を交わした。かたや東大の先生方は研究室を出てまっすぐに家に帰ったらあとは書斎に籠もってしまう。一人でいたんじゃ思いがけない考えなんてできないですよ。自分の中にもまだ熱していない生の考えみたいなものは一人でいくら考え続けてもダメ。周りから刺激を受けることで面白いアイデアが飛び出してくる。京都の人たちの偶然の知恵です。京都は街が狭いから自然と人は集まりやすい。それに学者や学生を大事にする気風がある。
自分の考えていることを伸ばすには共感してくれるなんとなく温かい雰囲気がないとダメなんです。調子に乗せてくれるような空気があると一人で考えていたのでは出てこないことがボッと出る。いわゆる知的生産というのもこういう雰囲気の中から生まれてくるもんじゃないでしょうか。

さて、時代はインターネットの時代。自宅にいながらにして世界の人々と議論をすることも可能な時代を迎えた。しかし、まだまだその交わりは始まったばかり。ネットに頼ることで飲み屋での会話が少なくなっているのも事実である。
京都に移った「はてな」の近藤社長は「酒を飲み、コードを書く」というタイトルで次のように日記を書いている。http://d.hatena.ne.jp/jkondo/20080501

昨日は社内のJavascriptのライブラリがどうあるべきか、みたいな話を延々としていて楽しかった。それからいつも匿名ダイアリーを使っていると言う5人の増田さんが会社を訪れてくれたので、その人たちと話をして思いついたサービスのアイデアとか、コードレビューの文化を根付かせるにはどうしたら良いかとか、そんな事を話しながら酒を飲むのは楽しい。それでまた次の日起きて、コードを書く。そういう風に日々が過ぎていく。

語り合う中から、思わぬアイデアやサービスを生み出していってもらいたいものだ。