外交敗北

テレビによく登場する重村智計さんの『外交敗北』(講談社:2006年6月刊)を読んだ。北朝鮮のミサイル発射前に執筆され、発売が今回の事件とシンクロした。北朝鮮問題を日本の外交、国内政治とうまく関連させ、複層的にまとめられているのでたいへん興味深い。

北朝鮮は、冷戦時代以来、「振り子外交」を外交戦略の基本にしている。中ソ対立の時代には、中国が厳しい姿勢を示すとソ連に近寄り援助を獲得した。また、ソ連が冷たくなると中国に近づき、ソ連の気をひいて援助を獲得した。こうして、社会主義諸国から援助を引き出し、冷戦時代を生き抜いてきた。この外交戦略は、日米韓三国に対しても取られた。米朝接触がうまくいかないと、日朝交渉に乗り出した。日朝も暗礁に乗り上げると、南北対話を再開した。振り子のように、方向を変えた。

国際外交の基本姿勢を知っていると、さまざまな動きの意味が分かってくる。
なお、さすが新聞社出身の重村さんだけあって、短く小気味の良い文章を連続する文体なので、一気に読ませる術を心得ておられる。この辺は見習いたいものだ。