「健康」という病

年齢を重ねると同時に、健康に対する意識が高まってくる。視力が衰えたり、体型が変化したりという自覚できることと同時に、健康診断などでも要注意事項が増えてきたりする。「健康」という病 (集英社新書)テレビや雑誌では健康情報が満載で、○○健康法が次から次へと登場してくる。テレビショッピングでも健康機器は人気で、最近では「乗馬フィットネス機器」などが宣伝されていて、思わず注文してみようかという誘惑に駆られる。『「健康」という病』米山公啓集英社新書2000年)は、健康ということそのものを現代人は問い直すべきだという主張をしている。基本的で正しい健康に関する知識を一人ひとりが持つことは大事だと思う。たとえば、健康診断にしても、検査する一つ一つの指標について正しい知識を受け手側が持っていないと意味はない。
正常値と異常値の境界線というのも気をつけないといけない。たとえばコレステロール値、つい最近まで日本では250mg/dlまでが正常値であったが、海外での大規模な調査などの結果から動脈硬化学会で日本人の正常値は220mg/dlまで下げて、これを基準に治療をおこなっていくことが決められたという。しかし、日本人は220〜250のボーダーラインの人が多いので、基準値を変化すると異常者が大きく変化してしまう。
異常を発見することは大事だけれど、危機をあおることは問題だともいえる。あなたは病気です、と面と向かって言われたら、心理的インパクトは大きいのだから。フィンランド症候群というものがある。健康管理をしっかりされているグループと、そうでないグループのの人を15年後に結果を見たところ、健康管理されていない人のほうが高血圧、がんや自殺率などの面で、いずれも少なかったというものである。
健康に対する意識や基礎知識は持つことは必要であるが、過度に健康に敏感になってしまうと逆にストレスを感じてしまう。健康のことは考え出すときりがない。出来ることならあまり意識せずに生きていけたらと思うが、なかなかそうもいかない。