追悼:ピーター・ドラッカー

kohnoken2005-11-15

先週末、経営論の大家であるピーター・ドラッカーが95歳で亡くなった。ドラッカーほど世界の多くの企業や組織のマネジャーといわれる人々に大きな影響を与えた人はないだろう。日本でも絶大なる人気があった。
学生のころに読んだ「断絶の時代」が最も印象に残っている。同書ではすでに知識社会の到来を予測していた。黄ばんでしまった本には多くのアンダーラインが引かれている。最近の著作では「明日を支配するもの」が良かった。この本もほとんど各ページにアンダーラインを引いた。それほど一つ一つの文章が心に響いてくる。
印象に残る箇所は多いが、代表的な部分を一箇所だけ「明日を支配するもの」から引用しておく。

変化はつねに非顧客(ノンカスタマー)の世界で始まる。
顧客にとっての価値は、供給者にとっての価値や質とは違うものである。このことは企業にとっても、大学や病院にとってもいえる。
アメリカでは、伝統的な教会が衰退していくなかにあって、新種の大教会が急成長した。これは、それらの大教会が、教会に行かない人たちにとって価値あるものは何かを考えたためだった。その結果、彼らにとって価値あるものは、伝統的な教会が提供しているものではないことが明らかになった。儀式ではなかった。心の癒しであり、教会を通じてのコミュニティに対する責任ある貢献だった。

非顧客(ノンカスタマー)への注目は、最近ではハーバード・ビジネススクールのクリステンセン教授の理論にも受け継がれていく。
ドラッカーは日本の「和」の精神に最高の評価を与えている。世界において、必要とされるのは成果を上げる組織であると同時に、個々の人間にとってコミュニティでもある組織である、とドラッカーは言う。この日本の組織が持っていた良さを、今の日本が見失っていることに強い警鐘を鳴らしつつ、ドラッカーは亡くなってしまった。
深く哀悼の意をささげたい。
(画像)http://drucker.diamond.co.jp/ye.htmlより