戦場にかける橋

kohnoken2005-10-30

「戦場にかける橋」をテレビで観た。1957年のアカデミー賞、作品賞、監督賞、主演男優賞などを総ナメした作品だ。映画を見ていない人もテーマ曲である「クワイ河マーチ」を知らない人は少ない。
第二次大戦のタイ・ビルマ国境でクワイ河に架ける橋の建設を行う日本軍と捕虜になった英国軍、脱走した米国軍兵士が織り成す物語。英国の騎士道と日本の武士道のぶつかり合いが中心だが、英国軍軍医やカナダ兵の軍隊にはなじまない柔な人間性なども見ものだ。しかし、何より早川雪州演じる日本軍大佐の強さと弱さが、うまく表現されていると思う。
現代には、こうした武士道精神を持ち、背筋が凛とした日本人が少なくなったのは時代のせいだろうか。
映画を観ながら、つねに頭によぎっていたのは名著の誉れ高い会田雄次著の『アーロン収容所』(中公新書1962年)の中の一節だ。この本は、映画と同じビルマでの戦いの中で捕虜となった会田さん(戦後は京都大学教授となり著書「日本人の意識構造」はあまりにも有名)が観た英国軍、日本軍をはじめとした戦時の人間の行動論だ。

人間の才能にはいろいろな型があるのだろう。その才能が発揮させる条件もまた種々あるのだろう。ところが、現代のわれわれの社会が、発掘し、発揮させる才能は、ごく限られたものにすぎないのではないだろうか。多くの人は、才能があっても、それを発揮できる機会を持ち得ず、才能を埋もれさせたまま死んでゆくのだろう。人間の価値など、その人がその時代に適応的だったかどうかだけにすぎないのではないか。

たしかに異なった歴史条件の中で、運命に恵まれた人だけが陽の目を見るのかもしれない。
戦場において、自らは何もできないインテリだったと回顧した会田さんは、戦後数々の名著により日本人の心に大きな影響を与えた。なぜか、映画を観ていて若き柔な英国人やカナダ人兵士に会田さんの姿がダブって見えた。
(参考)http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=12902#AwardLabel
(音楽)http://www.asahi-net.or.jp/~UD3T-KRYM/902-jasrac/01-kwairivermarch.htm