MOTには何かが足らない

日本ベンチャー学会の9月シンポジウム「ベンチャー・中小企業のMOT」が東京・神保町の日本工業大学専門職大学院で開かれた。今年4月から開校した日本工業大学専門職大学院は、たいへんユニークな取り組みをしている。
いわゆるMOT(技術経営)教育を行っているのだが、中小企業を対象とした技術経営教育を目指している。そして何より画期的なのは学歴不問で社会人経験が5年以上というのを入学の条件にしていることだ。そして、仕事をしながら勉強でき、かつ短期間で修了できるようにするために、平日の夜間と土曜日での一年制というシステムでこれは全国初のものといわれている。学費は年間170万円で、学生の中には企業経営者も多いという。
この方向は間違っていないと思う。あとは、より実践的でかつレベルを落とさない教育がなされれば学生は集まるだろう。
MOTは、早稲田や東京理科大などでもスタートしているが、実際のところ何かが足りないと感じる。本来MOTは製造業で働くエンジニアなどに経営の知識を植え付けて技術と経営のバランスの取れたリーダーを養成しようというものである。たしかに、技術と経営ということは大事だが、今後の日本の製造業をはじめとした産業に必要なものが欠けているのではないか。
たとえば、デザイン教育だ。あらゆる産業にとってデザイン力の高度化が必要とされている時代になっていると思うが、このデザイン教育を行う高等教育機関はあるだろうか。アメリカではスタンフォード大学がデザイン会社のIDEA社の協力の下にデザインスクールを作っている。(BusinessWeek 8月15日号参照)トム・ピーターズのマニフェスト(1) デザイン魂 (トム・ピーターズのマニフェスト 1)
つねに経営分野に刺激を送り続けているトム・ピーターズは新著「トム・ピーターズのマニフェスト①デザイン魂」(ランダムハウス講談社2005年)の中で次のように檄を飛ばしている。

徹底したデザイン感覚が企業戦略の本物の推進力になることを、肝に銘じておこう。

経営教育の中にデザイン教育を取り入れるのもひとつの方法だが、逆にデザイン教育の中に経営教育や技術教育を取り入れるという方法もある。
目に見えるもの、そして目に見えないサービスにおいてもデザイン力はまだまだ革新の余地が大きい。教育産業としてみるならばデザイン教育は大きな成長力を秘めているように思う。