ムッシュかまやつ

テレビを見ていたら、かまやつさんが出ていた。先日の「下流社会」のエントリーで女性の分類にもその名がつけられた、あのかまやつさんである。ちなみに、かまやつは本名で釜萢と書くらしい。不思議な名前だ。Classics
不思議なのは名前だけではない。風貌がグループサウンズ・ブームの火付け役ザ・スパイダースで活躍していた30数年前とほとんど変わらない。テレビでかまやつさんと一緒に登場していたのは井上尭之(たかゆき)さん。この人は最初誰だかわからなかった。風貌がまったく変わっている。スパイダース時代も地味な存在だったこともあるが、おそらく街ですれ違ってもあの井上尭之だとは誰も気がつかないと思う。だいいち、井上尭之といってわかる人自体が少なくなっているだろうけれど。
スパイダースの魅力は、すべてに先進的であったことである。外国のロックをはじめとする音楽に敏感であると同時に、楽器や音楽機材といった道具類にも凝ったという。そしてあの独特のファッションも。テレビの番組は、かまやつさんと井上さんが当時を振り返るというものであった。「夕陽が泣いている」や「あの時君は若かった」などのA面ヒット曲よりも、B面のマイナーな曲に愛着を感じている二人は根っからのミュージシャンだ。
スパイダースが解散した後、井上さんが沢田研二ショーケンとピッグという新たなグループを結成したとき、かまやつさんは悔しいと感じたという。スパイダースの多くの曲を作ってきた自分が呼ばれるものと思っていたらしい。その悔しさがバネになり、方向転換してフォークの世界の作曲に目を向けていく。その後、吉田拓郎の多くのヒット曲を生んでいく。「なんとかなるさ」や「我が良き友よ」などが有名である。かまやつさんと「悔しい思い」というのはなぜか結びつかない。
数年前、一度だけ街でかまやつさんとすれ違ったことがある。すぐに誰だかわかった。音楽一筋に自分流の生き方を貫いている。それも肩に力が入らず自然体で。テレビの中でかまやつさんは、自分は最高の人生を歩んでいるといえると語っていた。この人のように生きれればよいなと思う。それにしても、かまやつさんは不思議な人だ。
(画像)CD「ムッシュかまやつclassics」BMGファンハウス