下流社会

下流社会(新たな階層集団の出現)』三浦展光文社新書2005年)を読んだ。この本、今年下半期の話題の書になるかもしれない。「さおだけ屋…」を超えるかもしれない。下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)
もはや中流ではなく、下流化している若い世代の価値観、生活、消費の実態を主にデータに基づいて分析している。読んでいて楽しい本とはいえないし、その主張には首をかしげるところも多々あるが、この階層化の問題を今、直視しておかないといけないと思う。
かといって、まじめで暗い話ばかりではない。著者は、以前一世を風靡したマーケティング雑誌「アクロス」の編集長をしていただけに、トレンドをつかむ臭覚には感心させられる。
冒頭に出てくる「下流度チェック」や、「女性の分裂」と題した消費者の類型化は、はてな?と思うところもあるが、面白さは感じるし、読者受けするツボの部分でもある。
若い女性たちを、職業志向か専業主婦志向かという軸と、上昇志向か現状志向かという軸から類型化している。

①お嬢系:裕福な家の専業主婦になることは今でも大きな魅力であり続けている。近年注目されている「名古屋嬢」などもこの分類に入る。
②ミリオネーゼ系:ミリオネーゼとはキャリアウーマンのこと。高学歴、高職歴、高所得の女性たちである。夫も高所得であることが多い。
かまやつ女系:学歴的には専門学校が多く、アーチスト系「手に職志向」の女性たちのこと。美容師や菓子職人、ペットトリマーなどをめざす。彼女たちのファッションの特徴から「かまやつ女系」という名がついた。現実には一人前の職業人になる前に挫折してフリーターになるケースも多い。
④ギャル系:渋谷などでよく見かけられ、そのけばけばしい外見とは裏腹に、専業主婦志向が強い。郊外に多く在住。
⑤普通のOL系:もっとも人口の多い層。専業主婦志向ではあるが、裕福な男性の争奪戦に敗れ、だからといってミリオネーゼのように仕事に生きがいを見出す意欲も能力も不足している。もちろんギャルになるにはそこそこ知性も学歴も高く、美容師やアーチストになるほどの美的センスや自己表現欲求はない。

こうして並べられると何やら新しい分類のようにも思えるが、こうしたジャンルはかなり以前から存在していたともいえる。
ちなみに、著者によれば「今、東京でいちばん美人が多い街は、銀座でも青山でもなく、まして渋谷でもない。それは日本橋二子玉川だ」という。ウケ狙いでいう話と著者自らも言っているので、その点は割り引いて考えないといけないが。日本橋には金融系企業で働くミリオネーゼ系が多いというのが著者の主張である。
先週末、久しぶりに日本橋に行く機会があった。三井不動産が高層ビルの日本橋三井タワーを完成させ、今年の12月からマンダリン・オリエンタル・ホテルもオープンするらしい。私には、以前と変わらぬ「おじさんの街」としか感じなかった。ホテルができれば、多少は雰囲気が変わるかもしれない。
ということで、この本は突っ込みどころが多く、時代をうまく捉えているようで、けっこうはずしているのではと思ったりもするのだが、時機を得た出版だし、「さおだけ屋…」やら「名門高校人脈」やらをヒットさせた光文社新書だから、年末に向けて大きな話題になる予感がする。