阿川さんのこの人にあいたい

週刊誌というのは、スキャンダルなどの記事か、どうでも良い記事が多いが、ついつい習慣化(ダジャレではない)して買ってしまう。そしてほとんど頭に残ることはない。考えてみれば新聞もそうかもしれない。毎日見るけど、頭に残るものは少ない。
さて、そういう無駄ばかりの記事の中で、ここのところ面白いと感じ始めたものがある。週刊文春の「阿川佐和子のこの人にあいたい」という対談だ。あらためてみるというと今週は592回ということでかなり長寿の対談記事であることを発見した。
先週の小野田寛郎さんも面白かったが、今週の長塚京三さんも新たな発見があった。
学生運動華やかなりし頃、安田講堂の攻防戦があった23歳のとき、フランスのソルボンヌ大学に留学し、フランス文学の勉強に行く。それは、虚構の世界を自分の中に取り込むために何もわからない何も知らないところに行ったほうが良いと考えたからだという。30歳のときすでにフランスでは「パリの中国人」という映画で主役デビューしていたにもかかわらず、日本に帰国してからは芽が出ずに、主役級の役をもらったりし始めたのは45,46歳という遅咲きだ。
あの長塚京三さんのなんともいえない雰囲気は、普通のように見えて、普通ではない人生を歩んできた背景があるからだろう。
阿川さんの最後のコメントは、

「ほっといて」オーラと、「仲良くしてね」オーラの混ざった長塚流職人風情の余韻はいつまでも心に残ります。またね!

で終わる。短い中にも的を得たコメントはちょっぴり文化の香りのする週刊誌ならではの感じがする。さすが作家のお嬢様だけのことはある。
良き時代の文芸系出版社の週刊誌のレベルを阿川さんがかろうじて守ってくれているように思う。来週もまた週刊文春を駅売店で買ってしまうことになるだろう。