足元の宇宙

雪の日の昨日、書店で本を探していたら、後ろのほうからお客さんと書店員の声が聞こえてきた。
お客さん「雑草についての絵本のような本、ありますか?」
書店員 「書籍名や著者名わかりますか?」
お客さん「この人の本です。」
書店員 「ずいぶん古い本ですね。少々お待ちください。調べてまいります。」
やがて、中年の男性らしいお客さんは、携帯電話で、どうやら奥様らしい方とその本について話し始めた。
やがて、書店員が戻ってきた。
「すみません。在庫がございません。ご注文いただくことは可能ですが、2週間ほどかかります。」
お客さん「そうですか。ありがとうございました。他を探してみます。」

時々、amazonの販売ランキングを見ている。
世の中の動きを知る一つの指標になるからだ。
最近では、すべての書籍の総合順位の上位に来ているのは、やせるための食事とか、レンジでチンできるおかずとか家庭料理に関するものが多い。驚いたのは、その下あたりに、あの雑草についての絵本が数点、並んでいるのである。
著者は甲斐伸枝とある。
「ざっそう」「雑草のくらし」「たねがとぶ」「稲と日本人」・・・などの数々の絵本の著者である。
いずれも1980年代に発刊された古い本だ。書店に在庫がないのも当然だ。
しかし、なぜamazonランキングの上位に来ているのだろうか。amazonの個別の本で調べてみると、
いずれも在庫がない状態になっている。入荷待ち状態だ。書評のコメントをみても最近のものはない。
なぜか疑問がわいてきたので検索で調べてみた。
そうか、NHKのテレビで23日の休日の夜に
「足元の小宇宙:“雑草“が教えてくれたすてきな世界」
という番組を放映したのが原因だ。
http://www.nhk.or.jp/docud…/program/3035/2345010/index.html…

雑草だらけの荒れ果てた田畑も85歳の現役絵本作家の甲斐さんにとっては自然の不思議や美しさに出会える貴重な場所といえる。
農作物にとってはやっかいな雑草でお、一つ一つに名前があり、命の輝きがある。
雑草の荒れ地にうつぶせになって、同じ目線で草花を見つめる甲斐さんの視線の先に映るものは・・・。

多くの工業製品に囲まれ、作られた映像や情報を消費する現代人。
しかし、ふと足元をみれば、そこに小宇宙ともいえる神秘な世界が広がっている。
われわれは、その植物や昆虫について何も知識を持ち合わせていないことを悟るのである。

昨日の本FBエントリーで触れたように人間もビジネスも社会も螺旋階段を上るように成長していくはずなのだが、多くの現代人、多くの大人たちは直線的に成長するものと思い込んでいたのかもしれない。
そうではないことを85歳の甲斐さんや、純粋な子供たちから教わらなければならない。
草花にも神は宿るという日本の古神道の伝統を思い出したりもする。
先日紹介した竹内睦泰さんの著書「古事記の宇宙」。甲斐伸枝さんの「足元の宇宙」。
直線から螺旋へのシフトが日本でも世界でも起きつつあること実感する。