再びドゥンガの言葉

ワールドカップで日本チームはコロンビアに敗れ予選リーグ敗退となった。メディアでは、敗れても日本チームは進化しているという意見も出ているが、甘い考えは禁物である。
昨年秋のこのウイズダムダイアリーで、元・ワールドカップアメリカ大会で優勝したブラジル代表選手ドウンガの言葉を紹介した。1997年、日本チームが初めてワールドカップ出場を決めた時期のドウンガによる日本チーム及び日本への警鐘である。

今あらためて、その言葉をかみしめている。はたして日本チームは進化したのか? サッカーのチームの話だけでなく、日本および日本人はこの約20年弱の間に反省すべきところを反省し、進化をしたのか?
(⇒)は、今回の日本チーム予選を通じてのコメント。

1)日本チームはすべきことをし尽していない。
○勝つべき試合を落としたり、相手は弱いから簡単に勝つだろうという感覚が残っている。今までの試合の分析を徹底的にすべきだ。
コートジボワール戦は先制点を取って安心してしまったのでは。ギリシア戦は勝つべき試合であった。最後の詰めがどうしてできなかったのか。

2)日本チームはコミュニケーション不足
○ピッチ上で怒鳴ったりするのは敬意に反するという意識があるようだ。試合に負けたら敬意も何もない。注意をしないことで負けたら二人の関係は友人のそれですらない。
⇒本田を中心にピッチ上でのやり取りはあったようだが、11人全員が言葉を発していたのだろうか。

3)日本チームは間違いを見つけてもなかなか変えようとしない。
○トライしてだめなら、別の方法を考えるべきだ。
⇒3戦目のコロンビア戦は積極的な試合運びが見られた。しかし時すでに遅し。

4)外部招へいでポリシーがしっかりしていない
○これまでに招聘した海外からの指導者や選手で問題のあった人もいるかもしれないが、根本は呼ぶ側のポリシーがしっかりしていないケースがほとんどだ。専門家畏敬主義ですべてお任せにしたり、呼ぶ側が過剰に口出ししたりといった事があってはならない。呼んでくるべきは、選手に教育のできる監督、チームに貢献できる人材、つまり日本選手やスタッフの模範になる人間でなければならない。
ザッケローニ監督や海外活躍組については批判も多い。専門家畏敬主義、お任せ主義、丸投げ主義でいながら、最後に都合が悪くなると口出しをし、責任転嫁を図る官僚主義も日本のお家芸ともいえる欠点ではないのか。

5)日本人はほんの少しのことを覚えると、もうすべて理解したような気になってしまうことがままある。
○サッカーはつねに学習を続けなければうまくならない。絶対に立ち止まることは許されない。
⇒監督も選手もサポートメンバーもつねに新しいサッカー論の学習と実践が必要だ。過去の栄光、過去のセオリーにこだわりすぎてはならない。

6)日本人は謙虚さが足りない
○ワールドカップのレベルとアジアのレベルは違う。アジアで代表に選ばれるのと南米で代表に選ばれるのとではそのプレッシャーは大きく違う。たかがオリンピックでブラジルに1勝したということを語り草にして喜んでいるような陳腐なメンタリティは捨てたほうがいい。
⇒コロンビア戦の後、岡崎選手は世界との差を感じたとインタビューに答えていた。今頃気づいていたのであろうか。今まで何をやってきたのか。

7)キャプテンは医者である
○キャプテンというのは監督と選手の間に立つつなぎ役ではあるが、伝達係ではない。選手たちの雰囲気をつかまなければならない。本当の医者はまず予防に全力を尽くすものだ。キャプテンがチームの雰囲気を感じ取らなければならないというのはそういうことだ。
⇒長谷部キャプテンのチーム内での活躍については情報がないので何とも言えない。仲の良い雰囲気づくりも大事だが、それ自体が目標となっていはいけない。勝つためにという目標がないと。

8)日本の選手には気合が足りない。
ジュビロ磐田でもっとも難しいと感じたのは、若い選手たちに、絶対に勝ちたいという怒りに似た闘争心をいつも百パーセント発揮させることだった。
⇒コラムニストの勝谷誠彦さんは、大久保選手を称して「肉弾三銃士」と命名した。闘争心を感じたのは大久保選手のみであった。

9)日本の選手は自分のことばかり気にしている。
○周囲の人に注意を払わなければいけない。サッカーはサポートしあうスポーツだ。
⇒個の力を強化することと、周囲の人への注意は両立しなければならない。

10)基礎があるから高度なプレーが生まれる
○日本チームに勝ち負けの波が激しいのは、基礎が出来ていないからだ。日本の試合はあまりにミスパスが多すぎる。
⇒基礎力とは何かをあらためて考える必要があるだろう。肉体的なパワーという点では、絶対に勝てないのであるから、必然的に俊敏さが日本チームの基礎力となるはず。またパスミスなどは皆無にしなければならない。その点で本田のパスミスの多さは大きな問題であった。<<<<