なでしこジャパンの二人

25日にベトナムで行われた女子サッカーアジアカップ勝戦なでしこジャパンはオーストラリアを破って、優勝した。
2011年、あの思いもかけなかったドイツ・ワールドカップでの優勝。その時からなでしこジャパンなでしこリーグに注目をしてきた。
彼女たちの活躍から数多くのことを学んだ。日本女性の強さとしなやかさが「なでしこジャパン」に体現されているからだ。閉塞感漂う日本社会にあって、彼女たちの活躍は、無言のうちにわれわれ日本人を鼓舞してくれる。
ここで、代表的なメンバーである宮間と川澄についてのコメントを述べて、現時点での整理をしておきたい。
宮間あや
なでしこジャパンのキャプテンである。今回のアジアカップでMVPを受賞した。彼女は、あらゆる組織におけるキャプテン、リーダーのお手本である。何より、人の気持ちをおもんばかるということにおいては驚くべきものがある。
あの2011年のワールドカップ、PK戦を制し、日本チームが抱き合って喜ぶ中、宮間だけは一人、アメリカチームに駆け寄った。そして茫然自失のアメリカチームの選手に言葉を投げかけ、検討をたたえあった。
今回のアジアカップでは、あの準決勝の中国戦で延長戦の死闘を戦った翌日、控え組の練習に参加せずに体を休めろという監督の指示の中で、中国戦に出なかった控え組の一人一人のペットボトルに、キャプテンとしてマジックでコメントを書き、メンバーに渡した。そのエピソードは丸山桂里奈なでしこジャパンのサイトで、紹介されている。
陰で支えるもの、表に出ないもの、気持ちの中に揺れがあるもの、弱きものに対するキャプテンとしての気持ちを明確な形であらわしている。それも一人一人に向けて。
だからこそ、澤や丸山といった先輩たちが宮間をリスペクトし、今回召集された若手控え組も、いつでもピッチに立てる心構えができたのである。
なでしこリーグでは、宮間はゴールキーパーの福元とともに岡山湯郷ベルに所属している。岡山の内陸部にある温泉地で、けっして裕福な環境にあるチームではない。しかし、この環境が宮間のキャプテンシーに大きな影響を与えているのだろう。
そして、彼女は常に上を目指す。けっして現状のチームに満足していないと発言する。そいて、ここで満足してしまっては、女子サッカーもいつかは支持を失っていくという強い危機意識を持っているのである。来年のワールドカップに向けて、メンバーがそれぞれのチームに戻り、さらに一層レベルアップしないと2大会連続優勝は望めないという。なでしこリーグアイナック神戸レオネッサの一強時代から今年は、浦和を筆頭に群雄割拠のシーズンとなっている。岡山の湯郷の活躍に期待したい。
川澄奈穂美
2011年ワールドカップでの大活躍で、一気になでしこを代表する選手に躍り出た。
川澄選手に驚かされるのは、ピッチでの活躍もさることながら、毎日欠かさず更新される「ROAD
Runner」というオフィシャルブログである。http://nahomi-kawasumi.net/
体を酷使するアスリートでありながら、365日欠かすことなく更新し、さらにその内容は、ユーモアにあふれ、四方八方に気配りをした、素晴らしい内容だ。このベトナムアジアカップの際も、アジアカップでのネタだけでなく、今年から所属している米国シアトルレインの試合情報を掲載するなど、多くのファンからのコメントで称賛の声があがっている。
今回の試合では、きゃしゃな体にもかかわらず、疲れを知らない驚異のスタミナがテレビ解説者から驚きの声で紹介された。あの死闘を演じた中国戦では、試合後のテレビインタビューで「楽しかった」と語るなど、根っからのサッカー好きなのだろう。そして、目に見えないところでのトレーニングが、時々報道で伝えられてくる。
ブログでは、選手たちとの交流、料理好きやネールアートのことなど、多彩な才能を感じさせる。これからの選手活動もさることながら、タレントとして一流の活躍が期待できる逸材であることは間違いない。