[書評]一流を育てる(秋山木工の「職人心得」)

最近の企業は大企業から中小企業にいたるまで若手の指導が出来ていないという声を聞く。技術やノウハウの移転が行われていないというのである。
各社は人材育成を高らかに経営の課題に掲げているものの、実態はおざなりの研修で人材育成が出来た気になっているのが現実である。
そうした風潮の中で、徹底した人づくり、それも半端ではない本物・一流の職人を育てている小さな組織がある。横浜市都筑区にある注文家具のメーカーである秋山木工である。
代表の秋山利輝さんが新著『一流を育てる』を発刊された。21世紀の職人は人柄が一流の「できた職人」でないといけないという。

一流を育てる 秋山木工の「職人心得」

一流を育てる 秋山木工の「職人心得」

今の日本社会に多くの示唆を与えてくれる本であるが、ここでは三つの点を挙げておきたい。
1)8年間で人材育成する仕組み
1年間は秋山学校で丁稚見習い、その後4年間は丁稚、そして職人として3年間働いて、9年目からは独立してもらう。
2)職人心得30箇条を毎日唱和する
ごくごく当たり前のこと、しかしこれがなかなかできない。こうした心得を行動に移せた人から実際の仕事の現場に連れて行くとのことである。
3)道具を大事にする
道具をうまく使える人、道具の整備が出来ている人から現場に行かせてもらえる。ここに掲げた写真の中央になぜか算盤が入っている。算盤の効用は心得29条に解説がなされている。
現代人に欠けていた教育の原点がここにある。

『職人心得三十箇条』
職人心得1 挨拶のできた人から現場に行かせてもらえます。
職人心得2 連絡・報告・相談のできる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得3 明るい人から現場に行かせてもらえます。
職人心得4 周りをイライラさせない人から現場に行かせてもらえます。
職人心得5 人の言うことを正確に聞ける人から現場に行かせてもらえます。
職人心得6 愛想よくできる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得7 責任を持てる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得8 返事をきっちりできる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得9 思いやりのある人から現場に行かせてもらえます。
職人心得10 おせっかいな人から現場に行かせてもらえます。
職人心得11 しつこい人から現場に行かせてもらえます。
職人心得12 時間を気にできる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得13 道具の整備がいつもされている人から現場に行かせてもらえます。
職人心得14 掃除、片付けの上手な人から現場に行かせてもらえます。
職人心得15 今の自分の立場が明確な人から現場に行かせてもらえます。
職人心得16 前向きに事を考えられる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得17 感謝のできる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得18 身だしなみのできている人から現場に行かせてもらえます。
職人心得19 お手伝いのできる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得20 自己紹介のできる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得21 自慢のできる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得22 意見が言える人から現場に行かせてもらえます。
職人心得23 お手紙をこまめに出せる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得24 トイレ掃除ができる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得25 道具を上手に使える人から現場に行かせてもらえます。
職人心得26 電話を上手にかけられる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得27 食べるのが早い人から現場に行かせてもらえます。
職人心得28 お金を大事に使える人から現場に行かせてもらえます。
職人心得29 そろばんのできる人から現場に行かせてもらえます。
職人心得30 レポートがわかりやすい人から現場に行かせてもらえます